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ウェビナーを開催する企業が増えて、配信そのものに慣れた人も増えつつあるいま、「いままでよりもこだわった映像で撮影したい」というかたが増えています。

この記事では、映像制作のプロ集団である「ゆるりと」の小熊さんと石川さんに、ワンランク上の映像づくりに必要な「カメラ」「レンズ」「マイク」「照明」の選び方についてお話をお聞きしました。
(聞き手:シャノン 村尾 慶尚)

こだわりの映像への第一歩は、ミラーレスの一眼レフカメラ

村尾 慶尚(以下 村尾):いまのウェビナーは企業のWebの黎明期に似ていますよね。とりあえずやってみたら、それなりに手応えがあったので、もうワンランク上のクオリティを目指したいと思われるかたも多いでしょう。
そこで今回は、「ワンランク上のウェビナー開催ためにどんな機材を揃えればよいか」という話を伺えればと思います。テニスやゴルフもそうですが、プロがどんな道具を使っているのかは気になるところです。

小熊 一基(以下 小熊):まずはカタチから入るのも大事ですよね(笑)。

村尾:はじめに動画を撮影するカメラについて質問させてください。ウェビナーをはじめるかたの多くは、ビデオ会議の延長でパソコンの内蔵カメラの前で話をして、配信するかと思います。しかし、配信に慣れてくると映像にもこだわりたくなりますよね。事業会社のマーケターが少しこだわりを持ったウェビナーを実施したい場合、おすすめのカメラはありますか?

小熊:いまだと、ソニーのα7シリーズですかね。少し値は張りますが、α7 SⅢ という新しい機種が発表されました。ミラーレスの一眼レフカメラです。

村尾:ミラーレス一眼カメラなら、手が届きそうですね。そうは言ってもα7 SⅢは高い(笑)。

小熊:個人としてはかなり高い買い物ですが、会社では買えるレベルでしょう。ミラーレス一眼の場合、普通のカメラとしても使えますから、会社の備品として元は取れるのではないでしょうか。どんな会社でも、社内のイベントなど撮影機会はあるはずですから。

村尾:せっかくの機会なので、プロの現場で使用するカメラについてもお伺いさせてください。弊社でもいま、ゆるりとさんに販促ドラマを作っていただいています。先日その撮影にこられた時には、複数のカメラを利用されていたと思います。中にはバズーカ砲のような大きなカメラもありましたよね。

小熊:あれは、レンズ交換式のPMW-F5というビデオカメラです。

村尾:プロが使うビデオカメラはどのような特徴があるのでしょうか?

小熊:まず音質が違います。もう一つは、業務用なので壊れにくいですね。ドラマ撮影の場合、音声が大事ですし、現場ではけっこう激しく使いますから。

村尾:たしかに制作会社の人って車に機材を積み込んで移動しますからね。先日の撮影ではブラックマジックデザイン(以下 Blackmagic)社のものも使われていました。あれはビデオカメラ一眼レフとは違うものですか?

石川立和(以下 石川):あれは、Blackmagicのシネマカメラの6Kですね。ミラーレス一眼ではありますが、手ブレ補正がついていないので、撮る場所やモノを決めた場合はよいのですが、現場で臨機応変に動いて撮る場合は、マーケターのかたでは少し難しいかもしれません。

あとはシネマカメラというだけあって、画質がものすごく良くて、色情報を記録するのに優れているんですよ。Blackmagic の4k や6kとかだと、◯◯ビットの色情報を記録することが出来ます。もとの色情報が多いと、ポストプロダクションと呼ばれる撮影後の作業で大胆にいじっても崩れないのです。

村尾:なるほど。スチール撮影の場合、RAWというモードで撮影して、撮った後で補正や加工をする人も多いですね。動画でも同じようなことができるんですか?

石川:カラーグレーディングといいます。ただ、これは初心者には結構ハードルが高いですね。ウェビナーでここまでする必要はないですが、プロのカメラマンが撮影する映像の場合、RAWモードで撮った動画の編集は、AdobeのPremiereやBlackmagicのDaVinci Resolveというソフトで加工します。

レンズは、ズーム1本と「こなれ感」を演出できる単焦点の2本

村尾:ここまでのお話でカメラについてはよくわかりました。次にレンズについて、ウェビナーの場合おすすめのものを教えてもらえますか?「レンズ沼」という言葉があるぐらいこだわりだすと奥深いですよね。

小熊:まずはズームレンズを1本用意するのがおすすめです。24mmから105mmぐらいのズームがあれば、数名を写したり一人だけ写したりと切り変えることができます。あとレンズには、F値(絞り)というものがあります。F値とはカメラの明るさのことで、簡単にいえば、F値の数字が小さければたくさんの光の量が入ってくるので明るい。明るいときれいに撮れますし、背景をぼかすことでその被写体にポイントを絞ることができます。

村尾:素人目にも、背景がボケているとプロっぽくきれいに見えますよね。

小熊:F値が低くて、かつズームレンズということになると金額もかなり高くなって、数十万円になります。そうなると通常のズームレンズ1本に、F値が低い単焦点レンズを加えるというのもありですね。ただ、単焦点の場合、画角が決まっているため、どんな画にするかあらかじめ決めておく必要があります。

村尾:なるほど、ズームレンズ1本と単焦点で明るいものが1本あるとよいかもしれませんね。あとオートフォーカスとレンズの関係について教えてください。

石川:オートフォーカスは基本的には、カメラのレンズとの組み合わせです。そこもまた色々あって、単焦点でもオートフォーカスが使えるものと使えないものがあります。一般的には、カメラとレンズのメーカーをそろえた方が、オートフォーカスの効果が高くなります。

村尾:ウェビナーの場合、やはりオートフォーカスが必要ですか?

石川:そうですね。カメラを操作できる人がいるかどうかで変わってくると思います。ウェビナーの講師のように動かない被写体だと撮影しやすいのですが、ワンオペの場合は基本的に、オートフォーカスがあったほうがよいですね。

村尾:カメラとレンズのメーカーは基本的にはそろえて、オートフォーカスの効果を高めたほうがよいということですね。

ウェビナーの満足度を高める鍵は、マイクとスイッチャー

村尾:次にマイクについて。ウェビナーは音声が重要ですね。

小熊:マイクは絶対必要です。ピンマイクでも、ガンタイプのマイクでもよいので、マイクは話す人に向いているものを使うことをおすすめします。ウェビナーの満足度は、話している声の音質によって大きく左右されますから。あとは、できるだけ音が反響しないでしっかり録音できる環境も必要です。

村尾:音声はなかなか後で調整できないですからね。一眼レフのカメラを使ったとして、マイクの音声はどうすればよいでしょうか?

小熊:外部のカメラで撮影している場合は、通常はマイクの端子をカメラ側に挿して、カメラの側からHDMIのコネクターで音と動画を一緒に取り込んで流します。この時にスイッチャーがあった方が音声と映像がそろってよいですね。個人的にワイヤレスのものが好きなので、トランスミッター(送信機)とチューナー(受信機)がセットになっているソニーのSONY UWP-Dシリーズのマイクをよく使っています。スイッチャーは、ATEM Mini Proの一択だと思います。

村尾:なるほど。スイッチャーを経由して動画配信することが音声と映像がずれないコツなんですんね。

3つの照明を使いこなして顔の立体感を演出

村尾:あと、照明も大事ですよね。

小熊:照明も語りだすといろいろ長くなるのですが、まずおすすめしたいのは、人物やモノを撮るときに、3つの方向から撮る三点照明です。正面は顔を明るくするため、斜め上からのキーライトからは、目鼻をはっきりさせるため。そして、頭の後ろから打つバックライトは、輪郭をはっきりさせ立体感を出します。

村尾:ウェビナーの場合、顔の印象も重要ですよね。

小熊:カメラもそうですが、照明も価格破壊がありました。この3年でLEDの撮影用の照明器具の価格は10分の1ぐらいになったんです。今では脚付きの照明が、8千円程度で買えますね。

村尾:そういえば、先日弊社で販促ドラマを撮っていただいた時に、四角い照明器具に白い布を被せていましたね。あの布にはどういった役割があるんでしょうか。

石川:あれはディフューザーといって、光を拡散させるために使っています。普通の照明をそのまま使うと、光の当たり方が少しわざとらしくなってしまうんです。ディフューザーを使うと、肌の質感などを自然に柔らかく見せることができます。

村尾:照明本体以外にも工夫されていることがあるんですね。私たちのウェビナーでは、グリーンバックを背景に話すことが多いので、まずは正面とキーライトの二点照明からはじめようと思います。いずれ三点照明にもチャレンジしてみたいです!

「映像の民主化」が進んだいまは、ウェビナーのクオリティを高めるチャンス

村尾:最後に質問ですが、ウェビナー制作で社内のマーケターが自分たちではじめるとして、クオリティを高める第一歩は何でしょうか?

小熊:そろえておきたい機材は、外部のカメラ、照明、それとスイッチャーですね。これだけあれば、格段に違ってきます。あとは話す時の姿勢や位置や視線といった、ちょっとした演出です。こうしたことを気をつけるだけで大きく変わるので、ウェビナーの配信に慣れてきたかたは、ぜひチャレンジしてみてください。

村尾:そうですね。マーケターであれば、見た目や演出にもこだわりたいですね。

小熊:映像機材の世界って、ここ数年でかなり大きな変化が起きたんです。カメラの性能が飛躍的によくなって、金額もかなり下がりました。昔なら、一人でカメラを撮って一人で編集するなんて考えられなかったです。たとえば、今ぐらいの映像のクオリティを出そうとしたとき、15年ぐらい前だったら数千万から1億円ぐらいかかったと思います。今では個人でも、少しお金を集めればできる時代になりましたね。

村尾:まさに「破壊」が起きたといえますね。昔はテレビや映像の制作会社で働く人以外は、プロ用の機材なんて触れる機会なんてなかったですよね。

小熊:私が映像やってみようと思ってはじめたきっかけは、カメラがデジタルになって進化したからです。2008年に、キヤノンEOSの5D Mark II というデジタルカメラでフルHDの動画が撮れる機能がついたあたりから、がらりと変わりましたね。当時はデジカメでCMや映画が撮れると言われました。それとあわせてパソコンも同時に進化しました。パソコンとデジカメが一台ずつあれば映像制作が出来る時代になったところで、今回のコロナ禍がきて、ウェビナー用の撮影機材を探す人が一気に増えてきました。

村尾:もともとは大学や研究機関にあった大型コンピュータがパソコンになり、今ではそれ以上の性能をスマートフォンで持ち歩いているのと同じぐらいの変化ですね。まさに「映像の民主化の時代」と言えるのではないでしょうか。そんな時代に、機材にハマったり、演出に凝ったりしながら、ウェビナー制作を楽しんでいけるのはチャンスですね。今日は、そのためのヒントが伺えたと思います。本日はありがとうございました。

本記事でご紹介した撮影機材一覧

カメラ

動画編集ソフト

マイク

スイッチャー

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