自社のマーケティングの全体像をつかむフレームワーク「購買ピラミッド」とは

この記事では、マーケティングの全体像を把握し、課題や施策を検討する方法について、以下の内容に沿って解説します。

  • マーケティングフェーズ全体を管理する
  • フェーズの引き上げパスを見える化
  • フェーズ内の優先順位をつけてフォロー
  • メンバーの成長を促す

マーケティングにおいては、多くのフレームワークがあります。
なかでも、「4P」(製品、価格、流通、プロモーション)や「4C」(価値、価格、利便性、コミュニケーション)は、企業側、顧客側の視点からの基本的な考え方として有名です。

しかし、現在のBtoBマーケティングにおいては、教科書的なマーケティングの理論ではなかなか把握できないと考えるマーケターも多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するフレームワーク「購買ピラミッド」は、BtoBマーケティングにおける基本的な考え方であるとともに、 マーケティングのリーダーにとって必要なファネルの全体管理方法です。

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マーケティングフェーズ全体を管理する「マーケの状況はどう?」この問いで経営層が求めているものとは

はじめに、マーケティングフェーズ全体を管理する必要性について考えます。

例えば、社長や経営側の偉い人あるいは上司からのこんな問いかけに、どう答えられるでしょうか?

「最近、うちのマーケティングの状況ってどう?」

例えば、「 見込み客のリードは○○件獲得できています」、「Webページのページビューは○○です」などと答えても、 経営者や上層部からの納得は得にくいといえます。

KPI を設定して現在のマーケティングの状況を把握することも重要です。

しかし、経営層が求めているのは、自社のマーケティングの全体での成果や、予算や人材も含めた状況ではないでしょうか。

マーケティング部門が経営に貢献しようとするならば、自社のマーケティングの現状だけではなく、課題や目標とのギャップを把握して、わかりやすく社内に共有していくことが必要になってくると思います。

そんな時に、 この「この事業の関心層が足りていない」とか、「関心層は多いが、商談にいたるまでの比較検討の層が少ない」といった、施策に落とし込むための、全体を俯瞰した上での課題感を共有して取り組んでいく必要があります。

そのために、購買ピラミッドというシンプルなフレームワークが役に立つのです。

もちろん、ほかにも役立つ実践的なフレームワークはあります。例えばセールスフォースで確立された有名なフレームワークの「ザ・モデル」があります。

「マーケティング」「インサイドセールス」「外勤営業」「定着化支援」という4つのフェーズに区分して、それぞれのフェーズの中で「母数」「成功率」「ゴール」を数値化することで、各部門間が連携しながら一貫した顧客対応をとる体制が整えることができます。

ただし、マーケティング部門が自分の担当する領域内で顧客のフェーズを管理する場合には、活用が難しいフレームワークかもしれません。

「ザ・モデル」は企業のマーケティングの視点から、細かく顧客のフェーズを管理するものではないからです。

また、「マーケティングオートメーション(MA)」の基礎になるフレームワークは有効で、中でもスコアリングは非常に重要な手法なのですが、このスコアリングも個別の顧客の獲得のためのもので、マーケティングの全体管理という意味では適していません。

重要なことは、包括的・統合的に捉えたマーケティングの全体像から、顧客のセグメントとフェーズをきちんと管理して、インサイトを得て施策をおこなっていくことです。そこでおすすめのフレームワークが購買ピラミッドです。

購買ピラミッドで顧客のフェーズを管理する

購買ピラミッドでは、「認知」「興味」「関心」「比較・検討」「商談」と、顧客の行動に応じて購買フェーズを定義・管理します。

企業ごとに顧客の購買フェーズの分類は変わってきますが、シャノンでは5つのフェーズに分けています。

ポイントは、「ファネル」(漏斗)を逆にしたものであることです。Webマーケティングに詳しい人であれば、ファネルの方が馴染みが深いかもしれません。

ファネルとは漏斗のように上から、リードが入り、次第に絞り込まれて受注にいたるというプロセスを表したものです。

しかし、企業のマーケティングの全体像を顧客の行動から捉えるときには、ピラミッドの構造の方が適しているのです。

なぜならBtoBマーケティングで戦略を検討する際には、後に説明する「引き上げ」という施策が重要となるからです。

購買ピラミッドとは

ピラミッドであれば、顧客の認知から、目標である商談にいたるまでの各フェーズの状況を管理しやすく、直観的に把握できます。

今、自社の見込み顧客が、どの段階にあるのか。それぞれの段階の顧客がどのぐらいの数で、その中でのスコアの状況がどのようになっているかがわかりやすく、企業の中での課題を共有しやすいことも理由です。

非対面接点の管理で重要なのは「お客様がなにをしたのか」

もうひとつの理由は、ここ数年、企業のお客様との接点のなかで「非対面」の比重が増えていることです。

以前は、まず営業マンがお客様に会って、そこからお客様の関心を引き出し、商談に導くという流れが普通でした。

そこでは、SFAなどによって対面の接点である営業を管理することが重要でした。

しかし、ここ数年のデジタル化の進展によって、従来の営業訪問や、セミナー、展示会での名刺交換などの「対面」での接触機会だけではなく、デジタルによる「非対面」での接触が増えてきました。

以前からその傾向はあったのですが、2020年からのコロナ禍を契機にますます拍車がかかったといえます。

ただし、「非対面」の重要性は増しているのですが、展示会、セミナー、商談といった「対面」の重要性が無くなるとは考えられません。

対面と非対面、その両方を統合的に管理することが重要だということです。

では、非対面接触のお客様の管理では何がポイントになるのでしょうか?

購買ピラミッドの重要性

対面接触が起点になる時代では、「営業」が「お客様へ何をしたか」を管理する方法が主流でした。

そのため、CRMやSFAでは、営業を主語に、購買までのお客様との関係をパイプラインで捉えることが重要でした。

一方、非対面接点では、「お客様(顧客)が何をしたか」という、顧客を主語にしてフェーズを管理していくやり方が必要になってきています。

「カスタマージャーニー」との使い分け

購買ピラミッドで、顧客の行動によってフェーズを把握していくことで、ピラミッドの中の分布や推移を把握できます。

それによって自社のマーケティングの強みと弱みが明確になり、そこから打ち手が見えてきます。

顧客の行動を把握するという点で最近注目されているものとして「カスタマージャーニー」もあります。

これも顧客行動のストーリーを描く上では便利なのですが、抽象的なモデルを表したものなので、現実的な打ち手を見出すことは難しいでしょう。

カスタマージャーニーは自社の顧客のフェーズの状況を把握し、各フェーズの顧客の課題が見えてきたときの個別の施策を検討する段階では有効ですが、全体像から顧客の状況を把握せずに使用しても「絵に描いた餅」にすぎなくなります。

「引き上げ」か「リード獲得」か — ピラミッドから施策を考える

購買ピラミッドを使って、フェーズごとの分布と推移を知るというのは、具体的には以下のようなことです。

  • メルマガ配信を許可している認知フェーズの層は、20,000人いるが、ここ数ヶ月減少傾向にある
  • 興味フェーズの層は、4.000人で横ばい傾向である
  • 関心層は400人いて、比較・検討層に引き上がる層もいる。
  • 比較・検討層は100人で、商談への引き上げも増加している。

購買ピラミッドで見る購買フェーズの推移

このように購買ピラミッドで各フェーズの分布や推移を整理できれば、そこから採るべき方法も見えてくるのではないでしょうか。

つまり、フェーズの分布上、中段以上の層の分布が少なければ、下の層からの「引き上げ」をおこなう、もしくは外部からその層に適合する「リード獲得」をおこなうといった具合です。

漠然としたリード獲得ではなく、自社のピラミッドから、どのような層が必要かにより、リード獲得の施策(外部メディア、セミナー、イベント、資料ダウンロード)も変わってくるでしょう。

フェーズ引き上げのための経路を知る

では次に、 「フェーズの引き上げ」について解説します。重要なことは、「フェーズも引き上げのパス(経路)も見える化する」ということです。

例えばマーケティングの現状を分析した時に、購買ピラミッドの上部に位置する比較検討フェーズの層が足りないといった問題が見えてきたとします。

こうした時に、各フェーズの層の人たちがどのような経路をたどってきたのかということが重要です。以下のような、フェーズの層の人たちの引き上げの経路が管理されていれば、施策につながるのです。

  • ウェビナーを見て関心フェーズに引き上がった人
  • 比較検討を経ずに、ウェビナーから商談に引き上がった人
  • オンラインメディアや広告から、関心層に引き上がった人
  • 展示会や自社主催のセミナー参加後のメールから関心層に引き上がった人

フェーズの経路を見える化

同じ比較・検討フェーズにいる人でも、広告で獲得したAさんと、イベントやメール、ウェビナーを通じて認知から興味、関心を経て引き上がってきたBさんとでは打ち出すべき施策は異なります。

こうした経路が見えていないと、一足飛びに刈り取り施策に傾きがちです。それぞれの履歴と経路を管理し、パターンにあった施策を打ちましょう。

施策の整理

ピラミッドのゴールである商談に引き上げるまでの段階で、ボトルネックがどこにあるのかを考えます。

比較検討にボトルネックがあるのなら、資料請求で外部からリードを獲得する、あるいはすでに獲得しているリードを関心フェーズから引き上げるのどちらかが考えられます。

リードによる「外からの引き込み」と、すでに存在する「下からの引き上げ」を統合的に考えた施策が必要です。

獲得したいフェーズに応じて予算を立てる

マーケティングの予算計画の上でも、購買ピラミッドは重要です。ピラミッドの頂点に近ければ当然、獲得するリードのコストは高くなり、低ければ安くなります。

自社のリードの状況によって、「まずはリード単価の安いウェビナーで関心層を広げよう」とか「認知のフェーズの人数は充分なので、これまで支払ってきたその予算を、比較検討のフェーズへの引き上げか獲得に回そう」という判断も行いやすくなります。

スコアリングでフェーズ内の優先順位をつける

BtoBの場合、獲得したリードは誰かが直接フォローしなければなりません。

非対面による接触が増えたとはいえ、最後には営業や、インサイドセールスなど、人を介したアプローチでブリッジすることが必要になります。

そうなると、たとえば比較検討フェーズの見込み顧客が300人いた場合、その全員に直接担当者がアプローチできないといったケースが生じます。

当然、アプローチのための優先順位をつけなければなりません。

こうした場合には、購買ピラミッドのフェーズ管理だけでは不十分です。

この時に必要になるのがマーケティングオートメーション(MA)のスコアリングです。

同じ比較検討フェーズの人であっても、 自社や製品をどのくらい知っているのか、ターゲットとして最近どのような興味を持っている人なのかをきちんとスコアリングで重みづけをして、優先順位をつけていきます。

スコアリングについては、MAツールによってはかなり細かく設定でき、設計については専門性が必要な場合もありますが、まずはシンプルな項目で設定した後に調整していく方法がおすすめです。

自社を知っているか

  • ウェビナーや展示会の名刺交換をしたか
  • ホワイトペーパーのダウンロードをしたか

ターゲット度

  • マーケティング職か
  • 導入担当者か
  • 意思決定層か

最近の興味関心

  • 一ヶ月以内のWebアクセスがあるか

こうした接触履歴のスコア化によって、インサイドセールスや、営業にリードを渡すときにもホットなリードが一目でわかります。

スコアリングの一例

メンバーの成長を促すツールとして

最後に、購買プラミッドが、マーケティング部門や担当メンバーの成長を促すツールであることを説明します。

マーケティングでは多くの業務が発生しますが、難しいのは「中間施策の評価」という問題です。たとえば、こんな風にメンバーから聞かれたことはないでしょうか?

「(私のやっている)メルマガは意味あるのでしょうか?」

これに対して「もちろんあります」とか「クリックされてますよ」とか「反応も来ています」というざっくりとした返事をしてしまいがちですが、より踏み込んだフィードバックができたらと思うことはないでしょうか。

メンバーが担当している施策、たとえばキャンペーンやイベント、Webやメールといった施策が、購買ピラミッドの中のどのフェーズに位置づけられているか、それぞれの施策がフェーズの層にどのような効果をもたらせているかを、メンバーに示せれば、安心感と同時に次なる目標に向けての成長を促すこともできるのです。

オンラインイベント実施後1年間の受注率の変化をメンバーで眺めてみたり、たとえばメルマガの効果をABテストで見る場合、購買ピラミッドの認知フェーズの人と興味、関心フェーズの人との効果を測定するといったことも有効です。

「自分が打ったメールの効果で、関心層が獲得できた」とか「実施したウェビナーの効果で、比較検討への引き上げが増えた。もしかしたら商談に結びつくかもしれない」ということが示され、実感できればマーケティングメンバーの事業への貢献意欲は高くなります。

このように購買ピラミッドには、「ピラミッド全体で施策を評価する」「ピラミッドの推移で施策を評価する」「メンバーの目線が広がり成長する」などの効果もあるのです。

以上のべてきましたが、購買ピラミッドのポイントを整理すると以下の4点です。

  1. マーケティングフェーズ全体を管理する
  2. フェーズの引き上げパスを見える化
  3. フェーズ内の優先順位をつけてフォロー
  4. メンバーの成長を促す

抽象的な方法論だけでマーケティングは、なかなか難しいものです。購買ピラミッドのようなフレームワークはあくまでも道具で、成果は行動や実践の中でもたらされます。私たちシャノンのツールをこうした実践の中で役立てていただければと思います。

最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。


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