一部の機能やサービスを無料で提供し、一定の機能・量以上の利用を希望する方には有償で提供する、フリーミアムのビジネスモデルを採用している、株式会社 Ptmindのヒートマップ機能付きアクセス解析ツールであるPtengine(ピーティーエンジン)。
フリーミアムは、2009年にクリス・アンダーソンの著書「Free 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」が大ヒットしたことで、一気に広がりました。
無料で使える機能やサービスがあるため、ユーザー数を増やしやすいというのが大きなメリットですが、無料だからと言って簡単にユーザーが増えるわけではありません。広がるきっかけとなる仕掛けや、口コミしたくなる良質なサービスであることがセットと言えます。
今回、Ptengineはどのようにしてユーザー数を獲得していくことができたのか、さまざまな失敗事例なども交えながら、株式会社 Ptmind 共同創業者 マーケティング&PR部 部長 小原 良太郎氏にお話を伺いました。
10万人が利用するPtengine、独自の強み
ーーPtengineについて教えてください。
Ptengineはヒートマップ機能を提供するツールです。Webサイトのどこがよく見られているのか、どこがよくクリックされているのか、などを見ることができます。例えば、ユーザーがWebサイトページの特定の部分を表示し「10秒見ていた」などが分かるので、よく見られている場所を発見できます。
会社自体は2010年12月に設立し、現在は、世界中で150名ほどのスタッフがいます。サービスの開発は中国で、日本や英語圏、中国でサービスを販売しています。僕は、「こういうサービスやこういう機能が欲しい」という要望を中国にあげ、日本でマーケティング営業をする役割を担っています。
ーーヒートマップツールという競合会社がいくつかある中で、御社の強みを教えてください。
上記は他社と比較したデータです。Ptengineは、クリックされた場所が正確に分かりますが、他社のデータは実際にクリックした場所とずれてしまっているヒートマップが表示されています。 こうなってしまうと、正確なクリックの位置が把握できないため、間違った分析をしてしまう可能性があります。
Webサイト内で、密接したエリアにバナーがいくつも表示されているサイトも多くあると思いますが、そのような場合は特に、正確なヒートマップを確認できることが重要です。
Ptengineの認知が広がったきっかけ
ーーどのようにしてPtengineの認知は広がったのでしょうか。
そもそも前提として、マーケティングとは「売れる環境づくり」だと考えています。Ptengineのマーケティング戦略としては、認知、啓蒙、契約、有効活用、口コミ、という流れです。
当初のマーケティングプランとしては、Ptengineの無料版を使った人の 口コミが自然に広がって、その中の一部の人に契約していただく、という流れを想定していました。しかし、無料版を出しても、誰も口コミしてくれませんでした。多くの方に認知される状態までいかなかったのです。
弊社のメインのターゲットは、デジタルマーケターです。そういう方々は、Facebook や Twitter などのソーシャルメディアはもちろん、はてなブックマークなどのネットで情報収集をしているだろうと考えました。
当時ははてなブックマークを起点にFacebookやTwitterに拡散していく流れがあったため、はてブにのるためにもブロガーさんに記事を書いてもらうことで認知拡大をしようとしました。
ブロガーさんに書いてもらう手段としては、お金を払って書いていただく記事広告や、ストレートに記事を書いてほしいとお願いする形などがありますが、当時、ステマ問題が大きく取り上げられていましたので、掲載のされ方には非常に気を使いました。
費用をかけず、ステマにもならない方法で、2014年ごろ流行っていたインフルエンサーマーケティングを企画しました。
具体的な内容としては、ソーシャル上での影響力をスコアリングするサービス 「Klout(クラウト)」を活用し、Kloutスコアが50以上あれば、月15万円のプランをタダで利用できる、というブロガーさん向けの企画を実施しました。
この企画は自社サイトとプレスリリースで発表したのですが、メディアに取り上げられなかったため、 何人かの有名なブロガーさんをリストアップして直接コンタクトしました。すると、PV の多いブロガーさん達が何名か書いてくれたので、はてなブックマークのホッテントリ入りが続きました。
そこから一気に登録数が増え、Ptengineの認知も広がりました。この施策によって、これまでの流れがガラッと変わり、企業からの問い合わせも増えました。
当時はうまくいった認知プランでしたが、 だんだん行き詰まるようになりました。というのも、この方法では、ネットで情報を収集する人にしかアプローチできないからです。
ネットで収集しない方も多くいますので、 その後はオフライン施策もはじめました。オフラインではセミナーにスポンサードしたり、展示会に出展したりして、接点を増やすアプローチをしています。
認知獲得だけではユーザーが増えないフェーズへ
これまで、Ptengineを知ってもらう活動を実施してきた結果、イノベーターやアーリーアダプター層にサービスを知ってもらうことができれば、すぐ契約にいたりました。
しかし、認知が広がった結果、これらの層以外にも知っていただくケースが増えてきています。Ptengineは問題解決に使っていただくツールですので、そこの具体的なイメージがないと契約していただけません。
よって現在は「Ptengineを活用して、どのような問題解決ができるかイメージがない方々に、どれだけ情報提供できるのか?」というフェーズに変わってきています。
ーーそういう方々は、どういう想像ができていないのでしょうか?
例えば、ヒートマップを使うことによって良い悪いが分かる、ということは理解できても、 どういう設定をすればいいのか、実際どう分析するのか分からない、という方が増えています。そういったお悩みに対して、どう情報を提供していくかが大事です。
現在、無料版に月に3,000件の登録があります。そこから何%の方に有料会員になっていただくかという確率論の話となるのですが、有料会員になっていただくために関連する変数をどれだけ上げていくかが重要となります。そこで啓蒙活動として、Ptengineを活用している企業担当者にインタビューを実施し、事例コンテンツを増やしています。
その他には、オウンドメディアでデザイナーブログやエンジニアブログなどを更新している企業も多いと思いますが、「Ptengineについて書きたいんですけどいいですか?」という連絡をいただくことも多いです。これらについては、皆さんが自発的に行ってくださっています。
今お話したのはオンラインでの話ですが、 僕らが知らないところで、マーケターや代理店、制作会社などの交流会などのオフラインでの口コミも広がっているようで、「紹介を受けて登録しました」という方も多くいらっしゃいます。例えば、広告代理店や制作会社などは、クライアントへサイト改善の提案をするために利用しているようです。
フリーミアムのモデルは口コミ前提なので、今では紹介が35%を占めており、想定通り動いている状況です。
さまざまなマーケティング「失敗」事例
ーーこれまで実施した中で、うまくいかなかった事例を教えてください。
はい、たくさんあります(笑)
例えば、「今登録してくれたら、今後ずっと安くなります!」というキャンペーンを何回か実施しましたが、それがきっかけで登録してくれる方はほとんどいませんでした。つまり、値段が原因ではないということです。このツールで何ができるのか?が理解されないと、いくら安くても契約してもらえない、という教訓を得ました。
次に、「友だちを招待すると100円で使える」クーポンを出しましたが、全然招待してくれませんでした。これでわかったことは、自分でしっかり使ってみて「いいな」と思わないと、人に紹介しないということです。実際に、弊社のツールを使い込んで結果が出た方は大きな評価をしてくださり、色々な形で紹介してくれます。
その他にも、以前コミュニティ作りに挑戦し失敗したことがあります。 当時ユーザー数が4万人ほどいたので、オンライン上の Q & A サイトを作りました。ここでコミュニケーションが起こってくれたら僕らも楽だな、と思ったのですが、誰も質問してくれませんでした。オンラインのコミュニティづくりは圧倒的なユーザー数がいないと難しいなと感じました。
展示会でも失敗したことがあります。 デジタルマーケティングや IoT、AI などさまざまなブースが同時に出展する展示会は、あまり効果が良くありませんでした。本来のターゲットではない方も ブースに立ち寄り、質問などをされるのですが、 GA( Google Analytics) という言葉すら伝わらないことも多いですし、何より成果に結びつきませんでした。
逆に良かった展示会は、アドテックやマーケティングテクノロジーフェアです。ターゲットが絞られていますし、キャッチセールスが強引すぎる企業は出展 NG など、出展者側も厳しめに選定されています。
口コミが広がるきっかけとなるPtengineの特徴、興味関心を浮き出すツールとしても活用できる
ーー口コミをしてくれる方は、どのような成果を出しているのでしょうか。
認知が広がっても、実際にサービスが良くなければ口コミをしてくれる人は増えません。Ptengineを導入していただき、成果が出た事例をいくつかご紹介します。
分かりやすい事例からご紹介しますと、まずは旅館サイトの事例です。上記図右側を見ると「ご予約」という部分が非常にクリックされていますが、実はこの部分はデザインとしての見出しであり、クリックすることができない場所です。
サイト制作者は、旅行日程やプランを選んでから予約をするだろう、と考えがちですが、ユーザーは思い通りには動いてくれません。Ptengineを導入したことで、「ご予約」の部分がクリックできないため離脱されている可能性がある、ということが分かった事例です。
次に太陽光パネルを販売しているサイトの事例です。サイト内でよく見られているのは、商品ラインナップと保証内容、パネルを設置する人の顔写真の3つで、この会社が売りにしている太陽光パネルの特徴はほとんど見られていませんでした。
太陽光パネルは高価な買い物です。しかも、色々な太陽光パネルを見比べても一般の方は違いがあまり分からないので、購入を検討している方は不安があるのだと思います。そのことから、「購入したいけれど不安があるので、保証内容がよく見られているのではないか?」という分析をしました。
しかし保証内容は、 サイトの下の方に掲載をしていたので、 よく見られてると言っても、サイトに訪れた方の30%しか保証内容部分に到達できていません。せっかくサイトに来てくれた70%の方には、情報を伝えられてないということになります。
もしその70%の方に情報を伝えることができれば、申込数が上がるかもしれません。 この分析から、保証内容部分を上部に移動させました。単純な話ではありますが、これだけで実際に申し込み件数が上がっています。
次に英語のリスニング教材の LP の事例です。この LP にはほとんどクリックする場所がないのですが、色々な場所が押されているということが分かります。
色々な隙間時間での英語リスニング事例が載っているのですが、ヒートマップを見ていくと「通勤中」の部分が多くクリックされています。 このことから、「このサイトに来た人は、通勤中に使いたい人が多いのではないか?」という仮説が立てられます。
つまり、サイト閲覧者の興味関心までが分かってしまいます。このことから発想を転換し、オフラインの販促物として POPを 作る際にキャッチコピーや画像に悩んだ時は、まず LP やサイトにてクリックできそうな画像やコピーをいくつか並べ、反応が良いクリエイティブを広告に使うということをしている会社もいます。マーケティングリサーチを自社のサイト内でできるのです。
Ptengineはサイト改善だけではなく、興味関心を浮き出すツールとしても活用できるということです。
今後は、オフラインのコミュニティマーケティングを強化していく
ーー今後のマーケティングプランについて教えてください。
認知の部分はもう完成しているので、無料会員になってくれた方々に、「Ptengineを有効活用していただく知識をどうつけていただくか?」が次のテーマですので、今後はコミュニティマーケティングを強化していきます。
先ほどご紹介した成功事例など、 Ptengineのユーザーさんが情報発信できる場を作っていくことによって、喋りやすくなるということをしていくのが効果的だと思っています。僕たちが伝えたいことを、いかに他者を通じて伝えるかが、一番重要です。
そこで生まれたコンテンツを、適切な方に適切な情報をどう提供していくのかは、MAツール を導入して行こうと考えています。
Ptengine有効活用できる人口を増やしていくことで、結果としてツールが売れる土台が作れます。Ptengineを有効活用できる方が増えれば、その人が転職したとしても転職先で再び導入していただける可能性がありますよね。
弊社のマーケティングプランは施策ではなく、戦略としてやっているので、この仕組みで売れる環境づくりができています。どの変数を伸ばしていくと、 どれだけ売り上げが上がるのかということなので、これからも状況に応じて対応していきたいと思っています。
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