フルーツキャンディーバーを模した色とりどりの石鹸、『li’ili’i』(リィリィ)をご存知ですか?「インスタ映えする」と話題になり、都市部の雑貨店では入荷待ちが続出。シャノンがSHANON BtoB Marketing Conference 2019で、ご参加者様にお配りするステッカー入り石鹸も、『li’ili’i』の製造元である株式会社リンクラインに作ってもらいました。
障がい者雇用を目的に設立された「特例子会社」の事例としても注目を集めているリンクライン。大ヒット商品を生み出すまでには、障がい者スタッフの訓練や製品開発の試行錯誤がありました。
メイドインジャパンの意地、無添加固形石鹸作りへの挑戦
ーー『li’ili’i』が生み出されるまでに複数の自社ブランドを立ち上げていたそうですね。初めは無添加石鹸からスタートしたとか。
リンクラインが初めて作った自社ブランドは『小春日和』。国産の油脂で作った純度100%の無添加石鹸です。
僕はもともと石鹸作りのノウハウを持っていなかったので、最初は長野県のとある石鹸メーカーで武者修行させてもらったんです。それこそ泊まり込みでみっちり2週間。
ーー長野県の石鹸メーカーを訪れたのがきっかけだったのですね。なぜ長野県へ?
親会社から障がい者雇用の推進担当者に任命されたため、障がい者雇用のモデルケースになるような会社を探し回っていたんです。そんなとき出会ったのが長野県の石鹸メーカー『ねば塾』でした。
『ねば塾』では、スタッフの障がい者みんなが、自分たちの石鹸作りに対して誇りや自信を持って働いていました。
しかしひとり、会社にいても全然働いていないおじいちゃんがいたのです。それでも夜ご飯の時間になれば卓を囲んでみんなで食べていて和気あいあい。職場で一緒に時間をともにする仲間を認め合って過ごしている証であり、僕もこんな組織を作りたいとそのとき思いました。石鹸工房なら障がい者でも生き生きと過ごせる環境が作れると思い、石鹸工房の立ち上げに踏み切ったんです。
手作りで、無添加100%の純国産固形石鹸は800円と高いですが、一定のニーズはあるように感じます。
ーーその後キャラクターのOEMや、企業のノベルティなどさまざまな種類の石鹸に取り組まれていますね。シャノンのイベントで配布したようなステッカー入り石鹸はどのように誕生したのですか?
きっかけは、小学校6年生の男の子が抱く小さな悩みごとでした。
8年前、リンクラインを立ち上げてすぐの頃、男の子とお母さんがお店にいらしたんです。石鹸屋だとは知らなかったようですが、なにか困っていることがありそうだったから話を聞いてみました。すると、「小学校を卒業するからお世話になっていた先生たちに、自分が描いた油絵をプレゼントしたい。でも、手元にあるたった一枚のキャンパスをあげてしまうとひとりの先生にしかあげられない。何かいい方法はないかな?」って。
そのとき、油絵を写真に撮って石鹸に閉じ込めたらいいのではないかと思いつき実際に作ってみました。初めて作ったステッカーソープは、今でも残してあります。
思い出を形にしたいニーズは他にもありそうだなと思い、ステッカー入り石鹸に本格的に着手し始めました。改良を重ねたのち、石鹸の中に入っているステッカーの視認性が高く、シールの強度も高いノベルティ制作が可能になりました。
手作業ならではの個体差が選ぶ楽しみにつながる大ヒット商品『li’ili’i』
ーー大ヒット商品『li’ili’i』はどのようにして誕生したのでしょう?
『小春日和』に次ぐ自社ブランドを立ち上げるため、まずは市場で女性にウケている商品や流行りの雑貨を知ろうと思いまして……。日々、雑貨屋さんやセレクトショップで売っている女性向け商品を買い漁って研究していました。
そこから「フルーツをモチーフにした商品」が世の中にたくさんあるなと。確かにフルーツは、色や形、大きさがばらばらで、カラフル。僕らは、個の持ち味を大事にしながら石鹸作りをしてきましたから、フルーツとは親和性があるのではないかと思い製造を始めました。
今では、フルーツバーに形が似ていると話題になり、PLAZAやLOFTなどの有名雑貨店でも取り扱いがされています。
ーーここまで大ヒットした理由はなんだと思いますか?
ひとつひとつの商品が個性を持っていることです。すべての工程を手作業で行なっているため機械では実現できないリアリティが生まれ、個性につながっています。
本物のフルーツも二つと同じものはないじゃないですか。それと同じで、『li’ili’i』も作り手が違えば形や大きさが少しずつ違う。その違いが、お客さんが石鹸を選ぶときの楽しさや愛着につながっているのだと思います。
『li’ili’i』で最も売れているのはフルーツが全部入ったミックスフルーツの石鹸です。これもひとつひとつ形が違ってグレープフルーツが手前にきているものもあればレモンが目立つものもある。「私は赤が好きだから、ピンクグレープフルーツが目立つものにしよう」なんて選び方をするお客さまもいるでしょう。このような選び方は、量産型で製造されている化粧品やギフトではなかなかできないですよね。
香りにもこだわっていて、フルーツごとにそのフルーツの香りがするようにブレンドしています。見た目がかわいいからといって飾るだけではなく、ぜひ使ってほしい商品です。
ーー職人さんはどのように育てているのですか?
決まった教育プログラムはありません。肌感覚で教えています。
リンクラインで働く障がい者に求める水準は、他の施設に比べてかなり高いはずです。というのも、すべての仕事を固定化していないから。全部の石鹸を誰でも作れるようにするのを目指しました。例えば、昨日みかんの石鹸作りを頼んだ人に、次の日、薔薇の石鹸を作ってと頼んでいるようなイメージ。スタッフみんながすべてのタスクをこなせるようになり、生産需要に応じた人員配置ができるようになりました。
また、彼らが作った製品に対して良いものは良い、ダメなものはダメとはっきりと線引きをしていくようにしています。その結果、誰が作っても一律に高品質の製品が作れるようになりOEM依頼元からの信頼を得られました。
ーー働いている障がい者のみなさんは、どのような点でやりがいを感じているのでしょうか?
自分の作った石鹸が大勢の人が訪れるショップに並んでいるのを見たときじゃないかな。
週明け、彼らが嬉しそうに報告しにきてくれるのです。「週末ロフトに行ったらうちの石鹸が並んでいました」って。大勢のお客さんに自分が作った商品が認知されていること、手に取ってもらえることが彼らの自信や誇りにつながり、仕事をするうえでのモチベーションになっているのでしょう。
これからも、『li’ili’i』をはじめとした自社ブランドに注力していく予定です。そして、働く障がい者自らが主役になるような、組織作りを進めていくのが僕の役目だと思っています。
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