営業におけるパイプラインとは? 売上アップをもたらす管理のコツ

コロナ禍で「顧客に会えない」期間を経て、営業部門でもリモートワークの割合が増えました。DX推進も急務です。そんな状況のもとで、営業部門へデジタルツールが浸透してきています。

「パイプライン管理」は営業マネジメントの手法のひとつで、デジタルツールの普及とともに活用されるようになってきました。SFAやCRMを導入した営業部門において、「デジタルツール導入によって生産性を向上させる」というテーマに取り組むなら、おすすめの方法のひとつです。

今回は、パイプライン管理について、メリットや手順、活用のポイントを解説します。

なお、シャノンのマーケティングオートメーションでは、SFA機能によるパイプライン管理が可能です。

リードが長らく商談化しない

パイプライン管理とは? 営業を見える化して改善することのメリットを解説

パイプラインとは何か、どう活用するのかを解説し、パイプライン管理のメリットも整理します。

営業におけるパイプラインとは

パイプライン(pipeline)の元の意味は石油やガスを送る設備ですが、その見た目になぞらえて、ビジネスにおける一連の進捗を管理するときにパイプラインと呼んでいます。今回とりあげる営業部門のパイプラインのほかに、「製造パイプライン」「開発パイプライン」などもあります。

営業におけるパイプラインとは、営業プロセスを管理する方法のひとつです。商談に始まって受注で完了するまでの営業の各ステップを分類し、案件の現在位置を見える化したうえで、分析・評価・改善をします。
以下はパイプラインの一例ですが、項目の詳細は企業や業態ごとに異なり、商談ではなく問い合わせを起点とする場合もあります。

パイプラインの一例
BtoBでは商談から受注までの期間が半年以上となることも多いので、この間のプロセスを詳細に分析し、各段階で必要な対策を追加していくことが有効です。

パイプライン管理では「細分化」により課題を見つけて、対策する

パイプライン管理のキーワードは「細分化」です。営業活動のプロセスを細かく分けて、各案件の現在のステータスを可視化することにより、どの部分に課題があるか、どのステップに注力すべきかを明確にします。たとえば以下のように対応します。

チームや個人が特定のステップで足踏みしていることがある
パイプラインでは時間経過も重要な要素です。たとえば、「解決策の提案」のところで時間がかかっている案件が多ければ、顧客が抱える多様な課題を洗い出し、それらに有効な提案をチームで再検討します。

ある段階まで進んだあとに、失注する案件が多い
たとえば、「見積の提出」や「クロージング」のようなコンタクト後終盤に失注している割合が高ければ、競合他社に顧客を奪われているかもしれません。自社商品の差別化や最終提案のプラン・金額などを改善する対策が考えられます。

成功パターンの要因も見えてくる
受注に至った案件のパイプラインを分析して、成功パターンに欠かせないポイントをおさえます。たとえば「決裁権者に会う」をクリア後の成功率が高いなら、各案件について、営業担当者にマネージャーも協力して決裁権者に会うルートを探したり、決裁権者へのプレゼンテーションの機会を設定したりといった対策をします。

以前本ブログで紹介した「営業プロセス管理」もパイプライン管理と近い考え方です。各段階における課題の発見と改善が意識されているときにパイプライン管理と呼ぶことが増えているようです。

参考:リモート移行が進む「営業プロセス」を、マーケティング部門との連携で強化する

インサイドセールスの領域をパイプラインに含めることもある

インサイドセールスの部門やチームを営業部門に連携する企業が増えています。最初に見込み客と会話をすることが多いインサイドセールスはあとに続くフィールドセールスの進捗や成果にも大きく関わっています。インサイドセールスの領域もパイプラインのなかで管理することが有効です。
インサイドセールスも含めたパイプライン

インサイドセールスを含めたパイプライン管理ではシームレスな情報の連携が欠かせないので、デジタルツールが必須といえます。

参考:インサイドセールスの役割とは?導入のメリットと手順、応答率を上げるコツも紹介!

パイプライン管理のメリット

パイプライン管理のメリットは以下です。

ボトルネックを見つけて改善できる
チーム全体、営業担当者ごと、さらに個別案件について、パイプラインの詳細なデータを分析して「どこに問題が発生しやすいか」を見つけ出すことができます。このような「ボトルネック」を明確にして、改善対応をしていくことができます。

早期に課題を発見し、タイミングよく行動できる
チームのメンバーから相談を受けて営業マネージャーがサポートに入る体制だと、対策が遅れがちです。パイプラインで最新データを常に共有できる状態であれば、問題が起きそうなポイントを早期に見つけて対応することができます。大きな受注が見込める顧客に対しては、追加提案をするといったアクションもあり得ます。

より正確な売上予測ができる
営業のプロセスを可視化することにより、それぞれの案件の受注見通しが立ち、正確な売上予測ができます。事業計画、経営計画にも有益です。

フォーキャスト管理に寄与する
フォーキャスト管理とは業績目標管理のことです。売上が業績目標に届かないと予測できる場合にはそのギャップを最少にするための対策を実行して、目標達成の確度を上げます。パイプライン管理により営業プロセスが可視化されていれば予測が立てやすく、フォーキャスト管理もしやすくなります。

参考:フォーキャストとは業績目標管理。その定義、進め方、成果を出す方法は?

個人の営業スキルが上がる
行動を見える化し、スピーディーに次の対策を実行して、その結果を再度検証。このような、パイプライン管理による合理的な営業活動により、短期間で担当者の営業スキルが上がります。

営業ナレッジの共有と標準化ができる
パイプラインで管理される情報は、企業や事業部門独自のナレッジとして引き継がれ、体系的に蓄積されることでさらに価値を増します。営業部門で課題となりやすい「スキルの属人化」から脱却できます。

なお、シャノンのマーケティングオートメーションでは、SFA機能によるパイプライン管理が可能です。
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パイプライン管理の手順

パイプライン管理をどのように進めていくか、順を追って説明します。

営業プロセスの細分化と定義

パイプライン管理ではまず、営業プロセスの細分化と定義をします。ステップを細かく分けると同時に、どのような条件を満たす必要があるのかを定義します。たとえば以下のようになります。

ステップ 定義
初回商談 顧客企業の担当者と会う
ヒアリング 競合他社も知っている
解決策の提案 顧客の課題を明確にして、それを解決する具体的な提案を提出する
決裁権者へのプレゼン 決裁権者と会い、提案内容を伝える
クロージング 回答期限を設定する
受注 申込書を受領

このほかに、試用期間があるサービスなら「トライアル中」、大企業であれば「社内稟議中」などのステップが入ることもあるでしょう。商材や営業方法によって項目は違ってきます。

項目を細分化しすぎないこともポイントです。項目が多ければ営業担当者が入力する負担が増え、分析にも時間がかかってしまいます。
表内にある「BANT条件」については、次に解説します。

「BANT条件」などに照らし、現状を判定

「BANT」とは、営業活動において必ず入手するべき、重要な顧客情報の頭文字をとったものです。

  • B(Budget): 予算
  • A(Authority): 決裁権
  • N(Needs): 必要性
  • T(Timeframe): 導入時期

これに以下の2項目を加えて「BANTCH」と呼ぶこともあります。

  • C(Competitor): 競合
  • H(Human resources): 社内人材

BANT条件は、営業担当者が商談の際にヒアリングすべき重要項目であり、その後の進捗や受注の確度、売上金額を左右します。パイプライン内の現状のステータスとBANT条件から現状を判定し、今後の予測と対策を立てます。

ボトルネックを見つけてその対策を立て、実行する

「チームの営業売上が思うように上がらない」「大型案件の受注率が思わしくない」「リードタイムが長くなり、最終的に失注する」などの問題があれば、原因を分析する必要があります。

こうした場合に、パイプラインで管理された営業プロセスを細かく見ていくことで、問題の要因となっている「ボトルネック」を見つけ出すことができます。

たとえば、パイプラインの各ステップの案件数推移を見てみます。
商談数から受注数までの推移

図で、「決裁権者へのプレゼン」と「クロージング」へのステップアップの際に大きく数字が落ちていることがわかり、原因と対応策を検討します。

決裁権者に会ってプレゼンテーションする機会を確実に増やすこと、見積書を提出するときには稟議の予定などをヒアリングし、回答を得る時期をできるだけ早めに設定することなどが対策として考えられます。

これらはまだ仮説であり、対策を実行して状況が改善したときにはじめて正しい仮説だったということになります。実際には、個別の案件の状況、営業担当者個人の進捗など、さらに細かいところまで分析したうえで、とるべき行動を決めます。

パイプライン管理を成功させるためのポイント

最後にパイプライン管理を成功させるポイントを挙げます。

デジタルツールによるリアルタイムの情報共有が不可欠

パイプライン管理の目的は「早期に課題を発見して対策すること」ですから、その根拠となるデータは常に最新の状況を反映していることが重要です。営業の現場で起きることについては、できるだけその日のうちにチームで共有できるよう、情報共有のしくみを整える必要があります。

このときに使われるデジタルツールとして一般的なのがはSFAです。

営業担当者が1次情報を入力しやすいデジタルツールを選ぶためには、入力がしやすいインターフェースかどうかも重要です。営業担当者が負担よりも便利さを感じて使い続けられるツールを選びましょう。

自律的なチームを作るために、マネージャーの役割が重要

パイプライン管理ではチームメンバーにとってもわかりやすく納得感が得られるよう、プロセスを見える化します。そのゴールは、「メンバーが自ら課題を発見して対策を実行する、自律的なチーム」です。そうなるために、マネージャーの役割が重要です。

営業マネージャーはチームが業績目標を達成するために、パイプライン管理を活用します。デジタルデータを分析して合理性のある対策を決定・実行していくだけでなく、チームメンバーが行動計画に納得できるよう、直接のコミュニケーションを欠かさないようにすることも大切です。

チームメンバーの業績アップをサポートすればメンバーから信頼が得られ、チームが業績目標を達成すればマネージャー自身の評価も上がります。

まとめ

本稿のポイントは以下の4点です。

  1. 営業のパイプライン管理とは、商談から受注までを各ステップに分け、案件の進捗を見える化して管理する方法です。
  2. パイプライン管理では、細分化して分析することにより課題を見つけ出し、改善します。
  3. パイプライン管理の手順は以下です。
    • 営業プロセスの細分化と定義
    • BANT条件などを基準に現状を判定
    • ボトルネックを見つけて改善する
  4. パイプライン管理ではデジタルツールの活用が欠かせません。

最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。


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