「インサイドセールス」は、マーケティング部門と営業部門の間に位置し、電話やメールで見込み客をフォローする専門職です。
シャノンではインサイドセールス部門を2016年に立ち上げました。当初は3名体制でスタートしましたが、2022年までに14名まで拡大。
この間に試行錯誤を重ね、インサイドセールスから商談へと導く実績を少しずつ増やしてきました。
今回は、前半でインサイドセールスを導入するメリット・デメリット、SDRとBDRなどを解説し、後半ではシャノンのインサイドセールス導入事例を紹介します。
インサイドセールスは基本一人で架電する孤独な業務なので、成果を上げるためには個々のモチベーションが重要です。そのためにシャノンで実践している取り組みもお伝えします。
インサイドセールスとは?導入すると売上アップできる?
インサイドセールスとはどんな業務なのか、導入するメリットなどについて解説します。
インサイドセールスとはどんな仕事?位置づけと目的
インサイドセールスとはどんな仕事でしょうか。
広義では、顧客を訪問せずに電話やメール、ビデオ通話などの手段で行う営業活動全般をいいます。
一方狭義のインサイドセールスは、マーケティングのなかで位置付けられる専門職です。
その基本型は、現代の営業スタイルについての著書『ザ・モデル』(福田康隆著)などで紹介されている図がわかりやすいでしょう。下の図の「フィールドセールス」は、従来型の対面でおこなう営業部門のことです。
図に示されているように、インサイドセールスの役割は以下です。
インサイドセールスの役割は、マーケティング部門から引き渡されたリード(見込み客)に対して電話やメールなどで営業活動を行い、商談可能な状態までリードを導いて、フィールドセールス部門へと引き渡すこと
インサイドセールスの目的は、「リードの購入意欲の確認と引き上げ」です。
実際にインサイドセールス部門が担当する業務は企業や業態によって違い、インサイドセールスがリードを発掘したり、商談まで行っていたりしますが、それらは基本の形のバリエーションとみなすことができます。
上記はSalesforce社が提案しているモデルですが、日本でこのような4部門の体制が確立されている企業はまだ多くありません。しかし日本でも、インサイドセールスはマーケティング部門と営業部門の橋渡しを担当する専門職として認識され、インサイドセールスの導入で成果を上げる企業が増えてきています。
インサイドセールスの6つのメリット
インサイドセールスのメリットとして、以下が挙げられます。
- 営業活動を効率化できる
第一に、インサイドセールスは電話やメールで主な活動をするため、顧客に会いに行くための移動時間が必要なく、そのぶん多くのリードとコミュニケーションをとることができます。第二に、インサイドセールスがリードにコンタクトして、案件化するかしないかの見極めをすることで、フィールドセールスが商談する案件の受注確度が上がります。インサイドセールスとフィールドセールスで分業を進めることにより、それぞれの専門性も高められ、効率的な営業活動が可能になるでしょう。 - 少人数でも成果を上げられる
インサイドセールスは1人あたりでコンタクトできるリード数が多いので、2~3名のチームでも機能します。フィールドセールスとの分業により、全体で成果を上げられます。 - タイミングを逃すことが減る
フィールドセールスが一日で訪問できるリード数は限られています。時間の制約により訪問できないリードが急いで導入を検討していたら、競合他社との商談が進んでしまうでしょう。インサイドセールスがいればフィールドセールスは優先順位の高い訪問に専念でき、このような機会の損失を減らすことができます。 - 顧客志向のアプローチを実現しやすい
インサイドセールスがリードに対して事前にヒアリングを行うことで、次にフィールドセールスが訪問するときには初回でありながら具体的な解決策の提案をすることが可能になります。リードに割いてもらう時間は最少に、提案はスピーディーになり、顧客志向のアプローチができます。 - 感染症など不慮の事態に事業を継続できる
今後感染症などにより対面営業が制約を受ける事態があっても、インサイドセールスは稼働を継続できます。BCP(事業継続計画)の観点からもインサイドセールスにはメリットがあります。 - 多様な人材が活躍できる
インサイドセールスは在宅勤務が可能なので、子育てや介護などの事情がある人も就業しやすい職種です。インサイドセールス部門を確立させることで、多様な人材が活躍できるでしょう。
上記のなかで1~4のメリットは、インサイドセールスが生産性向上をもたらすことを示しています。
インサイドセールスがうまく稼働すれば生産性が向上し、限られた営業リソースで業績を上げることが可能になります。
インサイドセールスのデメリットは?
一方デメリットとしては、以下があります。
- 成果を上げるまでに時間がかかる
インサイドセールス部門を新たに立ち上げる場合は、人材の確保や育成、自社に合った体制づくりなどの準備が必要です。インサイドセールスが他部門と連携して成果を上げられるようになるまでに一定の時間がかかります。 - マーケティング部門、営業部門との意識的な連携が必要
分業が進むほど、情報共有の重要性は増します。スピーディーに情報を連携させるためにMAやSFAなどのデジタルツールが欠かせないといえるでしょう。また、ツールによる情報共有をしたうえで、さらにリアルのコミュニケーションを欠かさないことが望まれます。
インサイドセールスのSDR、BDRとは
インサイドセールスにはSDR、BDRの2種類があります。
- SDR(Sales Development Representative)
問い合わせやコンタクトがあったリードに対するアプローチをSDRといいます。ここまで説明してきたような一般的なインサイドセールスはSDRです。 - BDR(Business Development Representative)
先方からのコンタクトがない企業に対するアプローチ、つまり顧客の新規開拓です。とはいえ、見込みのあるなしにかかわらず架電するかつての「テレアポ」のようなスタイルではありません。BDRは取引がない企業に対して戦略的にアプローチするので、インサイドセールス単独ではなく、マーケティングやフィールドセールスと連携して行動します。
このような方法はABM(Account Based Marketing)の施策として行われることもあります。
参考:ABMとは?実践ステップとおすすめツールを解説
今回取り上げているインサイドセールスはSDRですが、そのなかでもさまざまな業務内容があります。次に、具体的な業務について紹介します。
インサイドセールスの具体的な仕事内容は?
インサイドセールスの担当者は具体的にどんな仕事をするのでしょうか。
以下は実際のスケジュールと仕事内容の一例です。
インサイドセールスの主な業務はリードに電話をかけてヒアリングすることです。リードと会話ができたとき、入手すべき情報は多岐にわたります。
業務全体に通じるインサイドセールスの大きな目的は「購入意欲の確認と引き上げ」です。
リードの課題をヒアリングして、自社の商品・サービスにより課題を解決できることを伝え、フィールドセールスとの商談を提案します。対話の結果、商談可能となったリードについてはフィールドセールスに引き渡します。
会話の流れ次第ではセールスを行うこともあるでしょう。長くて十数分程度の会話のなかで最大限の成果を引き出せるよう、インサイドセールスには臨機応変な対応が求められます。
以下はシャノンの新入社員がインサイドセールス部門に配属されたときのレポート記事です。リアルな姿を知りたい方におすすめです。
参考:電話アプリすらほぼ使わない新卒がインサイドセールスに配属された話
インサイドセールスがヒアリングする内容と「BANT」条件とは?
インサイドセールスがヒアリングするのは、以下のような内容です。
- リードの現状
まずはリードの基本情報(商材・提供サービス、ターゲット層)、状況(役職、ミッション、組織体制)、サービスへの興味・関心度を理解します。 - リードが持つ課題、疑問点や不安点
見込み顧客が持つ課題を聞き出すことも重要です。自社のサービス導入によって、それらの課題をどう解決することができるのかを伝え、顧客の興味を引き上げていきます。また、導入を検討している顧客に対しては、疑問や不安点を聞き出し懸念を解消することも大切です。 - BANT条件
BANT条件とは以下で、インサイドセールスが聞くべき重要項目です。
・予算(Budget)
・決裁権者(Authority)
・必要性(Needs)
・導入時期(Timeframe)
これに検討中の競合他社(Competitor)、人員体制(Human resources)を追加して「BANT-CH」とすることもあります。
BANTについては、以下の記事でくわしく解説しています。
BANTとは?営業で活用するメリットと条件の設定方法を紹介
インサイドセールスのKPI
インサイドセールスのKPIとしては、たとえば以下が採用されます。
- 架電数
まずは架電数を増やすことが重要です。 - 応答率
架電に対してリードが応答した割合です。 - 対話率
架電に対してリードが応答するだけでなく、インサイドセールスと一定時間対話した割合です。 - 商談アポイント数
営業担当者が商談のために会うアポイントを取得できた数です。 - 商談化率
担当したリード数や架電数に対して商談化となった割合の指標です。
インサイドセールス導入と運用のポイント
新規にインサイドセールスを導入したり、部門を立ち上げたりする場合、成果が出るまで一定の時間がかかると認識してじっくり取り組むことが大切です。外部サービスの活用が有効な場合もあります。
スモールスタートから始めて、3部門の連携をめざす
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスのそれぞれに人員を配置して独立した部門とし、かつ3部門が連携することで成果を上げていく形が理想です。
しかしインサイドセールス部門を新設する当初は、2~3名で試行錯誤しながらのスモールスタートとなるでしょう。
企業によって違う、インサイドセールス導入のスタイル
インサイドセールス部門をどのように運用するかは、以下のように企業によってさまざまです。
企業によって違う、インサイドセールス導入のスタイル 以下、FS:フィールドセールス、IS:インサイドセールス |
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FS、ISの2つの部門を別個に設置 | FS、IS部門のほか、マーケティングも合わせた3部門の役割分担を明確にして分業する企業が、今後は増える見込み |
社内の営業部門はFSのみ、ISを外注 | インサイドセールスを本格導入する前段階として、外注からはじめる企業も多い |
社内の営業部門はFSとIS、ほかにISの一部を外注している | インサイドセールス部門を内製とアウトソーシングのハイブリッドで運用している企業も少なくない |
営業部門の一部にISチームを置く | コロナ禍を機にFSの一部をインサイドセールス化してスタートする企業もある。 フィールドセールスの人員がインサイドセールスを兼ねていることもある |
マーケティング部門の一部にISチームを置く | ISはリードナーチャリングなどのマーケティング要素も求められるので、マーケティング部門内からインサイドセールスをスタートさせようとする企業もある |
営業部門はISのみ | フィールドセールスをなくし、営業部門は「インサイドセールスのみ」という先進的な企業もある。今後は増えていくと見込まれる。 |
シャノンの例をご紹介すると、マーケティング部門のなかにインサイドセールスチームがあります。2020年からウェビナー参加者のフォローで外注のインサイドセールスも活用しています。
これにより、内製のインサイドセールスは比較・検討フェーズのリードの引き上げに注力することができるようになりました。
インサイドセールス部門立ち上げの課題は「人材」
企業がインサイドセールスを強化したいと考えるとき、最大の課題は人材の確保でしょう。
インサイドセールスはマーケティングと営業両方の知識が求められ、かつ非対面・短時間でのコミュニケーションの瞬発力も必要な専門職です。
しかし、まだ日本では歴史の浅い職種なので、インサイドセールスに熟練した人材は少ないのが現状です。
中途採用市場では、先進的なインサイドセールスを推進してきた代行企業の熟練スタッフ、海外営業部門でインサイドセールス経験を積んできた担当者などがあてはまりますが、まだまだ人材が不足しています。インサイドセールスの求人数は非常に多く、外部人材の採用は難しい現状があり、企業では主に社内人材をインサイドセールスとして育成する傾向です。
シャノンは2016年にマーケティング部門内に内製でインサイドセールスチームを立ち上げました。そこから2年、成果を出すまでのストーリーはこちらでくわしくご紹介しています。
参考:マーケ部門のインサイドセールスチーム立ち上げ奮闘記〜2年目でアポ獲得数205%成長になるまで〜
他部門との連携にはMAなどのデジタルツールが有効
インサイドセールス導入を検討するとき、もしSFA・MAなどのデジタルツールを未導入だった場合は、できるだけ立ち上げ時に導入することがおすすめです。複数の部門間で確実・スピーディーに情報共有するにはデジタルツールが欠かせません。
インサイドセールス業務を早期に軌道に乗せるためにも、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの3部門の連携がポイントとなります。MA/SFA/CRMのうち、すでに利用中のツールがあれば、インサイドセールスにも活用できます。
- MA
インサイドセールスはマーケティングから情報を引き継ぐので、MAツールによる管理が最もスムーズです。インサイドセールスをMAで管理する場合、MAツールで蓄積された情報がインサイドセールス業務に役立ちます。 - SFA
インサイドセールスをSFAで管理する場合、インサイドセールス部門の電話ヒアリングやメールへの履歴が蓄積され、フィールドセールスにとって有効な情報となります。 - CRM
顧客履歴を管理するCRMでもインサイドセールス管理が可能です。
シャノンのMAツール「SHANON MARKETING PLATFORM」では、マーケティングのデータをインサイドセールスに連携。インサイドセールス領域の業務も合わせて、情報を一元管理することができます。
インサイドセールス担当者がMAのデータを活用しやすいことはもちろん、架電記録、アポイント獲得実績管理など、インサイドセールス業務に必要な機能を備えています。
シャノンのマーケティングオートメーションは、インサイドセールスにおける活動をサポートする機能を幅広く搭載しております。
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「架電レース」「事前メール」など、シャノンで応答率アポイント数がアップしたコツをご紹介!
シャノンのインサイドセールスチームで成果を上げることができたシャノンの事例をいくつかご紹介します。
電話で会話できる確率を上げるポイントは「登録直後」「事前メール」
シャノンでは、リードが電話に出てくれた割合を「応答率」、インサイドセールスとして会話ができた割合を「対話率」と呼んで管理しています。以下のような方法で応答率・対話率を引き上げています。
リードが登録した直後の架電が有効
見込み客はたとえば、資料請求をするときにメールアドレスや電話番号を登録します。
シャノンのインサイドセールスチームは、可能な限り「登録直後の架電」を実施しています。
Webページを見て個人情報を登録しているとき、リードの関心は高まっているため、興味と関心が高い状態を忘れないうちに、スピーディーに電話でコンタクトをとることで応答率、対話率を高められます。
以下は実際の集計データです。「できるだけ1時間以内に架電」が望ましいといえます。
資料請求やお問い合わせがあったときにすぐ気が付けるよう、MAを活用してインサイドセールス向けにアラートメールが届くよう設定をしています。
架電予告メールが有効
電話をかけることを先方に事前にお知らせするメールを出すことで、応答率を上げられることがシャノンの実績からわかりました。「知らない人からの電話は出たくない」という心理的な障壁を下げる効果があるようです。メールには、会社と自分の紹介、インサイドセールスとして電話で伝えたい要件を簡潔に記載します。
事前のDM送付で応答率がアップ
しばらく動きがない休眠顧客のニーズの掘り起こしにはインサイドセールスが有効です。しかし、一定期間コンタクトがない休眠顧客は自社のことを忘れかけている可能性があり、その場合架電しても応答してもらえない確率が高いです。
応答率を上げる対策として、事前にDMを送付しています。担当者の目に触れやすいDMで会社名やサービス内容について再認識をしていただいたタイミングで架電。シャノンの実績では、約12%がアポイントに繋がっています。
上記の方法は、以下の記事でくわしく紹介しています。
休眠顧客の掘り起こしはなぜ必要?おすすめのアプローチ方法を紹介!
インサイドセールスはヒアリングの事前準備としてMAをチェック
インサイドセールス担当者にとって、架電を実施する前にできるだけ多くのリードに関する情報を入手して準備することが大切ですが、このときMAツールのデータが有効です。
電話をかける事前準備として、リードの「Webアクセスログ」「メルマガの開封履歴」などを詳細に見ることで、見込み客の興味・関心がどんな方向に向いているのかを推測でき、対話のシナリオ作成に役立ちます。
その他にチェックしておきたいのが流入元の情報です。
リードが自社LPに到達したのは、「Google検索から」「広告表示から」「SNSから」などのうちどれなのか、MAツールで情報を得ることで、リードがLPを閲覧した背景を知ることができます。
シャノンのMAツール「SHANON MARKETING PLATFORM」では、見込み客のアクセスログに流入元情報を紐づけて管理できるので、インサイドセールスにも有効です。
定期的な「架電レース」実施により総架電数がアップ
インサイドセールスはオフィス・在宅を問わず、一日中一人で作業することが多い仕事で、ときにはモチベーションが上がらなくなってしまうことがあります。
そこでシャノンでは定期的に「架電レース」を実施して、チームの一体感とモチベーションアップを図っています。ゲーム感覚で楽しく実施することがコツです。
レース実施後は、総架電数が増加した実績があります。
まとめ
本稿のポイントは以下の5点です。
1. インサイドセールスの役割は、リードに対して電話やメールなどで営業活動を行い、商談可能な状態までリードを導いて、フィールドセールスへ引き渡すことです。
2. インサイドセールスのメリットとして以下が挙げられます。
・営業活動を効率化できる
・少人数でも成果を上げられる
・タイミングを逃すことが減る
・顧客志向のアプローチを実現しやすい
・感染症など不慮の事態に事業を継続できる
・多様な人材が活躍できる
デメリットとしては成果を上げるまでに時間がかかること、マーケティングや営業部門との連携が必要になることが挙げられます。
3. インサイドセールスの業務は多岐にわたり、周到な準備や臨機応変さが求められます。ヒアリング項目について「BANT条件」が知られています。
4.インサイドセールスで成果を上げるためには、デジタルツールを活用してマーケティング部門、営業部門との連携を図ることが有効です。
5.インサイドセールスの担当者はときにはモチベーションが下がってしまうこともあります。モチベーションアップのための施策として「架電レース」で総架電数が伸びた実績があります。
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
また、シャノンコンテンツアシスタントでは、主にセミナー集客メールのタイトルと内容、記事集客メールのタイトルと内容、記事本文の生成が可能です。
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