商品・サービスを売るために、企業が消費者や企業へ向けて情報を広く知らせることを「アウトバウンドマーケティング」といいます。
この対極にある「インバウンドマーケティング」は、売りたいターゲットを絞り、「商品・サービスが対象者にとってどんな価値を提供できるのか」という情報を届けます。その結果として、顧客の側から主体的に興味を示してアクションを起こすことを「インバウンド」と表します。
現代は、アウトバウンドマーケティングからインバウンドマーケティングへのシフトが進んでいます。
このような流れの背景にある「ネットとモバイル端末の浸透」を理解し、次いで「BtoBビジネスにおけるインバウンドマーケティングをどう進めるのか」についても考えていきます。
コロナ禍でさらに注目を集めるBtoBの「インバウンドマーケティング」
BtoBビジネスは、コロナ禍の影響を大きく受けています。従来型の「営業担当者の訪問」という形で商品やサービスを売るスタイルが難しくなったからです。
そこでBtoBにおいてもインバウンドマーケティングが注目されています。
インバウンドマーケティングとは、「見つけてもらう」アプローチ
2000年代より前、企業が商品やサービスを売るには「知らせる」「売り込む」ことが大事でした。
BtoC企業なら店舗に商品を並べるとともに、TVや新聞に公告を出して宣伝。
BtoB企業では営業担当者がリストを見て電話をかけ、アポイントをとって商談。
当時、企業が持っている情報は顧客に比べて圧倒的に豊富で、それを届けることがマーケティングでした。
しかし、インターネットおよびスマートフォンなどの個人端末が浸透するにつれて、顧客の行動は劇的に変化しました。
顧客は、必要なものを購入したいと考えたらまずネットで情報を集めます。検索をするだけで、欲しい商品のくわしい情報が得られます。
それを自分のペースで比較検討し、好きなタイミングで購入することが可能です。
BtoBの見込み客の場合ならどうでしょうか。
自社が必要とする商品やサービスに関する情報を担当者がネットで調査し、まず社内で検討します。
メリットやデメリットまで比較したうえで「第一候補のA社をメインに、第二候補のB社も検討」などと方針を絞り込んでから、はじめてA社にコンタクトしてくる場合もあります。
つまり、企業から顧客の側に主導権が移ってきているのが現代です。
顧客側に主導権があることをふまえ、顧客にとって価値のある情報を届けて「見つけてもらう」ように仕向けるマーケティング手法を「インバウンドマーケティング」といいます。
インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違い
従来型のアウトバウンドマーケティングとインバウンドマーケティングの違いをまとめます。
インバウンドマーケティング | アウトバウンドマーケテイング | |
特徴 |
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類似の概念 |
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主な手法 |
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メリット |
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デメリット |
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表に示すように、インバウンドマーケティングは、主にネットを使ったコミュニケーション手段をつかうため、アウトバウンドマーケティングに比べてコストは安く施策は豊富ですが、顧客化までに時間を要します。
スマートフォンなどの個人情報端末が浸透し、商品・サービスの情報を顧客自ら入手できるようになった現在、インバウンドマーケティングが主流になりつつあるといえます。
しかし、アウトバウンドマーケティングがなくなるというわけではありません。企業はそれぞれの商品・サービスに適したバランスでインバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングを組み合わせています。今後もこの傾向が続くとみられます。
インバウンドマーケティングはBtoBとBtoC、どちらに向いている?
BtoBビジネスは以下のような点で、インバウンドマーケティングと親和性が高いとされます。
1) ターゲットとなる顧客が限られている
ターゲットは法人、しかも特定の業種に限定されることもあるBtoB企業では、予算をかけてTVや新聞に公告を出稿する手法をとることがBtoCほど一般的ではありません。マスメディアへの広告宣伝の代わりにネットを活用するインバウンドマーケティングが有効です。
2) 購入決定までに時間を要する
企業がある程度高額な商品・サービスを購入する場合、決定までの期間は1か月~1年程度とBtoCに比べて長く、この期間に継続的にコミュニケーションをとるインバウンドマーケティングが可能です。
したがって、BtoBビジネスではインバウンドマーケティングを大いに活用すべきといえます。
一方、BtoCビジネスにおいてもインバウンドマーケティングは欠かせないものとなりつつあります。
潜在顧客層が求めている情報を届けるブログやSNSによる発信、顧客体験を伝える動画の配信などで「自社商品のファン」を増やしていく手法が一般的です。また、BtoCのなかでも高額商品である住宅や保険などの分野では購入決定までの検討期間が長いので、インバウンドマーケティングが重視されています。
インバウンドマーケティングで実践する4つのステージ
インバウンドマーケティングは4つの段階に分けて実施されます。
「ATTRACT」「CONVERT」「CLOSE」「DELIGHT」のそれぞれについて解説していきます。
潜在顧客をひきつける「ATTRACT」
BtoBにおける潜在顧客とは、どんな人でしょうか。
それは、何らかの解決すべき課題がある企業です。その課題解決を自社の商品・サービスで提供できる場合はターゲットとなります。
ただし、対象企業が自身の課題を明確に認識していない場合もあります。したがって、インバウンドマーケティングは「課題を顕在化させる」ことから始まります。
施策を検討するために、ペルソナが有効です。自社の顧客の典型的な姿としてのペルソナを明確に設定し、ペルソナの興味・関心をひきつけるコンテンツを提供していくことで、ターゲットから見つけてもらうことを目指します。
※ペルソナについては、「BtoBマーケティングにおけるペルソナの作り方と活用方法を解説。シャノンが実践する一工夫もご紹介!」 の記事でくわしく解説しています。
《このステージの主な施策》
- ブログ
- SNS
- SEO
- Webサイト
潜在顧客と初めて出会うのが自社のWebサイトです。
最初に見たページが期待と違っていたらそこで訪問者は離れてしまいます。どんなコンテンツで興味を引き、ページ滞在時間を長くすることができるかが重要です。
※シャノンのホワイトペーパー 「企業Webサイトをどのように活用するのか?」では、Webサイトで情報を探しているユーザーを理解して、適切な対応が取れるようにするために、顧客管理システムとWebサイトを組み合わせる方法をご紹介しています。
リードを獲得する「CONVERT」
次は、興味をもってWebサイトを訪れてくれた人の名前・企業名・メールアドレスなどの情報を受け取り、見込み客「リード」を獲得する段階です。
《CONVERTのステージの主な施策》
- ホワイトペーパー
- ランディングページ
- ディスプレイ広告
- SNS
- Webサイト
潜在顧客にとって有益な情報を提供してリードを獲得する「ホワイトペーパー」は効率のよい施策の一つですが、「資料ダウンロードページまでどう導くか」「訪れた人にどうアクションを促すか」など多くの検討課題があります。さらにその他の施策も合わせ、全体でコンテンツを充実させていく必要があります。
※ホワイトペーパーとは?BtoBマーケティングでの活用方法・効果を上げるための5つのアイデアを紹介
以下はシャノンの資料ダウンロードページ(ランディングページ)の一例です。
CONVERTの段階が、MAでは「リードジェネレーション」にあたります。
※リードジェネレーションとは?MA(マーケティングオートメーション)で効果的に見込み顧客を獲得する手法と事例を紹介
リードを顧客にする「CLOSE」
メールアドレスなどの情報を得た「リード」に対しては、継続的にメールマガジンやその他の施策でアプローチを継続し、リードの興味関心を引き上げていきます。商談可能な「ホットリード」については、インサイドセールスや営業部門に引渡し、顧客化を目指します。
《CLOSEステージの主な施策》
- メールマガジン
- ウェビナー
- インサイドセールスによるコンタクト
- マーケティングから営業部門へのリードの引渡し
CLOSEの段階はMAの「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」や、「インサイドセールス」にあたります。これらについては以下の記事も参照してください。
※リードナーチャリングとは?MAツールを武器に、BtoBリードナーチャリングで成果を上げるための5つのステップ
※シャノンのTipsもご紹介。メルマガの開封率を上げる7つの方法とは
※データの蓄積と商談後の分析が鍵。シャノンのリードクオリフィケーションとは
※「インサイドセールス」の役割はどこまで広がる?フィールドセールスやマーケティング部門との分業のあるべき姿とは
顧客をファンにする「DELIGHT」
自社の商品・サービスを最も理解・評価してくれている「顧客」へのアフターフォローの段階で、よりよい顧客体験を提供するとともに、顧客の声をその後のマーケティングにも活かしていきます。目指すのは他の人に勧めてくれる「ロイヤルカスタマー」です。
※ロイヤルカスタマーとは?その定義と、MA連携でロイヤルカスタマーを増やす手法
《DELIGHTステージの主な施策》
- 顧客向けメールマガジン
- ユーザー会
- カスタマーサポート
- カスタマーサクセス
- マーケティング部門と営業部門の連携
顧客をフォローし、ファンを増やすのは「カスタマーサクセス」の仕事です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについては以下の記事を参照してください。
※カスタマーサクセスとは?業務内容、導入のメリットについて解説!
BtoBのインバウンドマーケティングにMAが欠かせない3つの理由
ここまでインバウンドマーケティングの具体策をみてきました。
多岐にわたるインバウンドマーケティング全体を効率よく運用するにはMAが有効であるということを感じた方もいると思います。
最後に、BtoBインバウンドマーケティングで成果を上げるためにMAがなぜ有効かを整理しておきます。
興味・関心層へ早い段階からコミュニケーションをとれる
インバウンドマーケティングでは「見込み客のアクションを待つ」ことが原則です。しかし実際には、待っているだけでは出会えない潜在顧客がいることも事実です。潜在顧客を含めた幅広い見込み客に対して適切なコミュニケーションをとれる点が、MAツールの最大のメリットのひとつといっていいかもしれません。
MAにより、リードを幅広く収集できます。
「興味・関心はあるが、まだ購入の意思を持っていないリード」
「購入の意思はほぼ固まったが、競合他社との選択を迷っているリード」
など、状況はさまざまです。
MAツールにより、以下のような手法が可能です。
顧客主導のインバウンドマーケティングだからこそ、各リードが必要としている情報だけを届け、「今は必要としない」コンタクトを避けることが重要といえます。
以下では、シャノンが実践している「隠れ検討層の獲得」と「関心層の引き上げ」について、それぞれ紹介しています。
組織を巻き込み、スピーディーにはじめる。「マーケティングDX」に必要な施策の整理とは
デジタルにも「対面の力」を。マーケティングDXを進める関心引き上げウェビナーとは
競合他社に先んじてアプローチできる
競合する複数の商品・サービスを比較・検討して最終決定するのも顧客です。
しかし、「他社と比較して、なぜ当社を選ぶべきか」の根拠となる情報を届けることは必要です。さらに、見込み客の不安や迷いに気づき、解決できる材料を提供できれば理想的です。
興味・関心をもって問い合わせをしてきたリードは、おそらく競合他社でも情報収集をしています。他社と差別化できるアプローチをするために、顧客の行動履歴を分析して顧客を理解できるMAツールが役立ちます。
営業部門との連携がしやすい
「顧客主導」とはいうものの、BtoBビジネスでは顧客からのコンタクトのみで購入にいたることは少なく、最後は営業担当者との商談を経て受注となるのが一般的です。
マーケティング部門がMAツールを導入していればSFAなどの営業部門のデータベースとのデジタル連携ができ、情報共有がスムーズです。
MAツールはリードの行動履歴をスコア化し、営業に引き渡すべき「ホットリード」をモレなく抽出します。また、リアルタイムでリードの行動を追い、商談へとつながる動きがあれば通知されるので、タイミングを逃すことなく営業担当者がアプローチすることが可能です。
以上のように、インバウンドマーケティングで着実に成果をあげるために、MAツールは大いに力を発揮します。
以下は最初にお示しした図です。現代のインバウンドマーケティングに必須の「顧客がアクションを起こす前」の行動に適切に働きかけをするために、シャノンマーケティングプラットフォームが有効です。
まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
1. コロナ禍で訪問営業が制限されるなか、BtoBビジネスでのインバウンドマーケティングの重要性が高まっています。
2. インバウンドマーケティングは「ATTRACT」「CONVERT」「CLOSE」「DELIGHT」の4段階で進行します。
3. BtoBのインバウンドマーケティングでは以下の点でMAツールが有効です。
- 興味・関心層の行動履歴を追い、各リードに対して適切なコミュニケーションをとれる
- 競合他社と比較しているリードに対して差別化する情報を提供できる
- タイミングを逃さずホットリードを営業部門に連携できる
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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