メルカリは、世界で1億ダウンロードを越えるフリマアプリです。
メルカリの登場までは、CtoCで不用品が売り買いができるインターネットサービスは、『ヤフオク!』一強だったかと思います。2013年、突如現れたメルカリはユーザーの心をわしづかみにし、爆発的に広がっていきました。
メルカリは、どのようにしてユーザー数を増やし、ユーザーのアクティブさを保っているのか。
今回、株式会社メルカリ マーケティンググループ シニアマーケティング スペシャリスト 細野 文子氏(トップ写真左)、丹下 恵里氏(トップ写真右)に話を伺いました。
オンラインとオフラインの掛け合わせで、爆発的な認知を獲得
株式会社メルカリ マーケティンググループ シニアマーケティング スペシャリスト 細野 文子氏
ーー簡単な自己紹介と、サービスの黎明期にメルカリをどのように広げていったか教えてください。
細野: 私は、ブランド全体のマーケティング戦略を担当し、オフラインのテレビCMや雑誌にどう落としていくか?という部分を考えるグループにいます。
まずメルカリが特徴的なのは、サービスを立ち上げて1年以内にCMを打ったことです。これは、ベンチャー企業では珍しいと思います。メルカリの肝となるのは、いかに多くのお客さまがマーケットプレイスにいるか、という点ですので、早い段階でテレビCMを使い認知を向上し、地道にオンラインで獲得していくことが必要でした。
都市部にいるとなかなか見えないのですが、 地方にいらっしゃる方はテレビCMから受ける影響が非常に大きいです。特に初期はそこに力を入れ、CMを打ったとたんお客さまの数は格段に増えました。今公表している数字では、国内で6,000万ダウンロード超、世界で見ると1億ダウンロード超となっています。
CM効果が大きかったこともあり、メルカリは様々な地域でお使いいただいていますが、それは独自の配送サービスも大きなポイントであると考えています。通常ですと、沖縄や北海道は配送料が高くついてしまう地域ですが、メルカリは匿名かつ全国一律の料金で配送することができます。現在、沖縄はスマホ保有者に対してのメルカリ利用率が非常に高く、購入額で見ると全国ナンバーワンです。ちなみに出品率がもっとも高い地域は大阪です。
丹下: 私は主にオンラインマーケティングを担当しており、インフルエンサーさんと一緒に開催するイベントや動画制作も担当しています。
初期は、オフラインの広告よりもオンラインの広告費が上回る時期もあるほど、オンラインにも力を入れていました。オンラインは黎明期から比較的うまくいっており、新規獲得のみを目標にしていても許容CPA内に落ちてくる、且つ継続率も高いという状況が昨年あたりまで続きました。
初期のテレビCMにはテラスハウスの筧美和子さんなどのインフルエンサーを起用させていただいて認知を獲得した後に、YouTuberさんとのコラボレーションも積み重ねてきているので、 オンライン上の地盤固めも行ってきています。
オフライン&オンライン マーケティングの成功事例
株式会社メルカリ マーケティンググループ 丹下 恵里氏
ーーマーケティングに関して、うまくいった施策を教えてください。
細野: 現在、ありがたいことに認知度が全国で約7割となっており「フリマアプリといえばメルカリ」という状況になっています。そこで、今しなければいけないことは、メルカリを知っているけど使っていない方に、いかに使っていただくかというマーケティングです。
それには、「メルカリを使うとどんないいことがあるか、そもそもどう使うのか」を一人一人に伝えることが重要になるので、地方局とのタイアップが非常に効果的です。
オフラインで直近うまくいった事例は、 ローカルテレビ局や一社提供のテレビ番組へCMを大量投下したことです。その地域で人気の番組に、番組連動型CMとして、その地域で人気のインフルエンサーさんに出演していただいたことで、ユーザー数が大きく増えました。
例えば大阪では、地元の方に圧倒的に愛されている人気番組があります。そこでは、お笑い芸人さんがもともとメルカリを愛用してくださっていたこともあり、「メルカリを知らない他の芸人さんさんに、愛用している芸人さんが使い方を教える」という内容で制作しました。視聴者は宣伝だとわかったとしても、自分にメリットがあると感じたら見てくれるのです。
同じ日本でも地方は全然違うので、「その地方では、何が流行っていて、誰がインフルエンサーで、どこの局を抑えればいいのか」ということを各地域ごとに調査しています。特に、大阪、名古屋、北海道、仙台、福岡、沖縄に注力しています。
番組の内容は、便益を伝える構成にしています。つまり「今までお金に変わるなんて思ってもみなかった不用品が、お金に変わります」という内容です。それだけではなく「スマホ操作が難しそう」という課題を解決するために、アプリのダウンロード方法から発送まで一連の流れを、本当に細かくステップバイステップでご紹介し、「それならできるかも」と思っていただけるように制作しています。
ーーメルカリさんで働いていらっしゃる方は、東京のIT企業ど真ん中かと思いますが、地方ユーザーとのギャップはどのように埋めているのでしょうか。
細野: 弊社のマーケティンググループは、お客さまへの定性的なインタビューを密にしていて、そこから得られるお客さまのインサイトをもとにマーケティング施策を立てています。
インタビューだとわからないこともあるので、実際お宅に訪問して、数時間一緒にお茶を飲むこともあります。お宅でメルカリに出したいものをお伺いして、実際その場で出品していただき、どこで操作につまづいてらっしゃるのかを確認することもありました。普段の生活の中で、メルカリがどう使われているのか確認することを重要視しています。
ーーオンラインのマーケティング成功事例を教えてください。
丹下 :2点あります。1点目ですが、サービス初期は、オフラインで一般認知が醸成できた状態で、オンライン上で新規ユーザーを刈り取るという王道の先方を取ったことが、とてもうまく行きました。
しかし現状では、すでにメルカリが6,000万ダウンロードを越えているので、既にアプリをダウンロードしたお客さまへのマーケティングもダイナミックに行う形へとシフトし、それがとてもうまく行っています。直近の行動や購入された商品を見て細かくターゲティングし、より買ってくれそうな方や、最近アプリを開いてない方に対してオンラインで広告をすることでお客さまの質を高めています。
さらに、オンラインとオフラインを合わせた立体的なプロモーションも設計しています。 最近ですとYouTube FanFest(ユーチューブ ファンフェス)に協賛させていただき、スカイピースさんとのコラボ企画を実施しました。
コラボ動画で事前に訴求をしつつ、当日のイベントでは「メルカリ宝探し」という、メルカリ上にあるスカイピースの撮影小物をみんなで探す企画をステージ上で告知しました。イベント後には、イベント当日に撮影した動画を、オンライン動画クリエイティブとして再活用し、Twitterのフォロー&リツイートキャンペーンの実施などオンライン・オフラインにまたがってコラボを楽しんでいただけるようにいたしました。
▼人気YouTuberスカイピースとのコラボ動画
https://youtu.be/lcTXIvPj0Og
コラボ動画では、メルカリのUIやユースケースなどサービス訴求もきちんと含まれているのですが、スカイピースが女装をしたり、学生服を着たりと、ファンのエンゲージメントもとても高い施策としてポジティブな反響がとても多くありました。
コラボ動画で使用した小物をこっそりメルカリに出品するという「メルカリ宝探し」という企画を実施したことで、イベント当日のDAUが数万に達するほど大きく跳ねました。 これは、非常にうまくいったインフルエンサーマーケティングの事例かと思います。
目先の目標を追ってしまった結果
ーー負け知らずという印象も受けますが、うまくいかなかった施策を教えてください。
細野: まず、私たちが大事にしていることは、お客さまのインサイトと、「メルカリは何を解決してくれるものなのか?」をしっかりお伝えすることです。しかし、売上げ目標が高い時などに、いくつかのキャンペーンでそれをおろそかにしてしまったことがあります。
例えば去年、出品数を増やしたいという目的があったため「売れば売るほど得をします、ポイントが貯まります」という直接的な内容の『売る得キャンペーン』を実施しましたが、全然伸びませんでした。よくマーケターがやりがちな失敗をしてしまったと感じています。
結局、どんなにポイントをもらえたとしても、そもそもメルカリを使ったことない方にとっては、出品すること自体は少しハードルが高いのです。アプリのダウンロードや配送など、お客さまが感じるめんどくささを越えるには、それ以上の便益を提供しなければいけません。
丹下: これからの課題ですと、メルカリに対してモチベーションが沸いていない方に興味を持ってもらうことがオンラインだけでできるのか、という部分が挑戦だと思っています。
本当は、出品の魅力を謳った方がメルカリらしくはあるのですが、ECサイトのように、「スニーカーがこんなにお得に買えますよ、レアものが見つかりますよ」などと、購入のメリットの方が動機づけしやすいので、魅力の伝え方をどう変えていくかがこれからの課題です。
ーーオンライン施策で態度変容やブランドリフトをするのか?という課題は多くの企業が悩んでいる部分かと思いますが、勝算はありますか?
丹下: 私たちのチームではオンラインでも態度変容すると信じています。説得力を持たせるためにインフルエンサーさんに語っていただいたり、クリエイティブの工夫をしたりしています。オンラインの領域できちんと便益をうたったり、きちんとブランディングをする事例はまだそれほどないと思いますが、いけると信じて日々がんばっています。
ーーところで、メルカリでお金を売ってしまうなどネガティブなニュースがいくつか報道されたかと思いますが影響はありましたか?
細野: 非常にありました。ただ一概にネガティブだったわけではなく、そのニュースをきっかけにメルカリをご存知になったお客さまも多くいらっしゃいました。
しかし、それを持って喜んでいいかと言うと、それは別の話です。フリマアプリ「メルカリ」というサービス、株式会社メルカリという存在のレピュテーションは著しく毀損されたと考えています。
ネガティブな報道がされる中では、PRがファクトや数字を出して説明していく努力を続けていかなければならないと思っています。PRとマーケティングのアプローチは少し違ってきますが、メルカリのファンになっていただきたいという目的は同じです。
カスタマーサポートチームとの連携を密に
ーー安心安全というメッセージはなかなか伝わりにくいかと思いますが、どういう思考錯誤されていますか?
細野: 安心安全は一番大事な部分かと思いますので、社員の半数以上をカスタマーサポートに充てています。外注に依存せずきちんと社内で育成し対応することを徹底的に行ってきました。
細野: 安心安全というメッセージは、私たちが発信する広告だけでは実現しない部分がありますので、PRでファクトを発表しながら第三者に語っていただくという組み合わせになるかなと思っています。
ーーマーケティングを行う上で部門間の共有が大事かと思いますが、メルカリさんではサポートにすごく力を入れていると聞いたことがあります。そのチームとマーケティングチームの連携について教えてください。
丹下: カスタマーサポートが最もお客さまとの距離が近いので、CMクリエイティブの最終チェックでカスタマーサポートのメンバーにアンケートを投げて、どれがいいかとか、お客さまからはどんな反応がありそうかなどを聞く場合もあります。
その後、カスタマーサポートにCMの反響が来ますので、その内容を密にマーケティンググループにフィードバックしてもらっています。
ーーユーザーからのイメージを壊さずに数字を伸ばしていくことのコツ、大切にしていることを教えてください。
細野: メルカリは、今後、インフラになるレベルのサービスだと思っているので、メルカリのメンバー全員が同じ認識で同じ価値観でいないと、お客さまが混乱を招いてしまうと感じています。そのために、ブランドエクイティをきちんと持って、経営陣からの合意も取り、制作会社やテレビ局とコミュニケーションするということを実施しています。
メルカリはどんなキャラクターでありたいのか、どんな差別化ポイントがあるのか。例えばCMでは、クスッと笑え、親しみやすいというキャラクターを大事にしています。
認知を取るフェーズでは、芸能人を起用したり話題になることをしたりすることは重要だと思います。その後、すでに認知を獲得しきったあとに、ブランドを愛し続けてもらうには、同じキャラクターで、安定して親しみやすくて、同じトーン&マナーで長期的にブランドを育成することが大事だと考えています。
より生活が便利になる仕掛けをどんどん出していきたい
ーー現金買い取りサービス「メルカリNOW」についてですが、競合とはどのように差をつけていく予定でしょうか?
細野: 他のサービスに比べて、高めに買い取れることが強みです。それはビジネスモデルに理由があります。競合のサービスは、買い取った後に買い取り業者に流しているようですが、弊社ではメルカリ内に循環させています。
メルカリNOWに出品すると、メルカリが買い取り、メルカリに出品される仕組みになっているので、買い取られないというリスクが抑えられます。
価格決めについては、 メルカリ内で過去に販売された類似商品の価格というビッグデータが蓄積されていますので、それをもとに非常に信頼性の高い数字を算出しています。
ーーこの記事の読者は男性ビジネスマンが多いのですが、そういった方々がメルカリを使うメリットを教えてください。
細野: 男性は趣味が充実している方が多いと思いますので、趣味の切り口でメルカリをお使いいただくといいと思います。例えば、ゴルフやテニス、野球、釣りなど、豊富に品ぞろえがあるので、見ていただくと面白いと思います。
この前、友人がゲーム機を出品したところ、20秒ほどで2万円で売れました。その体験が良かったようで、次の日から5つくらいゲーム用品を出品しています(笑)
趣味ではないですが、先日、大雪が降った日には除雪機を購入した男性もいました。1日に100万品以上が出品されているので、そんなものもあるの?という商品があります。
ーーメルカリブランドについて、今後の展望を教えてください。
細野: 例えば、『メルカリNOW』は忙しい男性をターゲットとしてスタートしていますが、メルカリユーザーの中にはずっとメルカリを見ていらっしゃる方もいます。比較的時間に余裕があってメルカリをエンターテイメントとして見ている方に、さらに楽しんでいただけるように、ライブ配信をしながら売ったり買ったりを楽しめる、ライブコマース機能『メルカリチャンネル』を作りました。
現在は、お子さんが小さい主婦の方を中心にご利用いただいていますが、ユーザー層を広げ、市場を拡大していきたいと考えています。時間に余裕がある方、時間に余裕がない方、女性や男性など、さまざまなニーズに応えていけるサービスを提供していきます。メルカリによって、より生活が便利になる仕掛けをどんどん出していきたいと思っています。
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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