2018年に経済産業省が示した「DX推進ガイドライン」以降、日本の各企業でもDXが推進されてきました。コロナ禍ではリモートワークや非接触技術が進展し、DXをいくらか後押ししたといえるでしょう。
しかしまだ、日本の取り組みが十分とはいえません。
そんななかで2023年、ChatGPTがリリースされたことをきっかけに、生成AIを活用し、DXが加速しています。
今回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か、DXの現状などをまず確認し、DXの課題、進め方や企業事例、シャノンがサポートする「マーケティングDX」について、順にご紹介していきます。
DXとは? DXの現状を理解しよう
まずDXの定義、関連用語、現状について確認します。
DXの定義は?いつから広まったのか?
DX(DigitalTransformation)はデジタルトランスフォーメーションのことで、簡単にディーエックスと呼ばれます。TransformationをXで略すのは、英語で「trans-」にXの略字を充てる習慣があるからです。
日本では、2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」を示したのを契機に、DXが広まりました。
DXの定義は何でしょうか。
経済産業省によれば、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(「DX推進ガイドライン 」(2018))
とされています。
一方、総務省では
「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」
と定義しています。
これらの定義のポイントは、以下2つです。
1. データとデジタル技術の活用
精度の高いデータと最新のデジタル技術を活用することが必須です。
2. 価値の創出と競争力向上が重要
デジタル技術は手段であり、目的は企業の変革です。企業がグローバル市場で競争するためには変革が不可欠です。変革により新たな価値創出や競争力向上が可能です。
これらを総合してみるとDXとは短く表現すれば、“デジタル技術による企業の変革”だといえます。
社会全体で急速にデジタルによる変革が進んでいる今、すべての企業にとってDXが急務といえます。
DXが注目されている背景
DX推進が必要とされる背景には以下があります。
「2025年の崖」への政府の危機感
通商産業省ではDX推進ガイドラインを示すと同時に、「もしDXが進まなければ2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失の可能性がある」と警鐘を鳴らし、日本企業にDXを促しています。
レガシーシステム問題
多くの日本企業ではインターネットが普及する以前にオーダーメイドで構築したITシステムが今も稼働しています。長年の間にシステムの追加変更を重ね、陳腐化・複雑化・ブラックボックス化したこのようなシステムを「レガシーシステム」と呼びます。レガシーシステムを脱却することはDXの重要課題です。
世界標準の競争力をつける必要性
日本企業の世界におけるプレゼンスが落ちてきたのはIT化の遅れが一因ともいわれます。今後企業が成長し世界市場で競争するには、すぐれた商品・サービスの開発と同時にDXが必要です。
働き方改革の推進
コロナ禍では企業がリモートワーク環境を整えるためにDXが欠かせないという状況がありました。アフターコロナでも働き方改革と生産性向上を推進し、優れた人材を確保するため、DXが重要です。
IT化、デジタイゼーション、デジタライゼーションとの違い
デジタルトランスフォーメーションと似た用語でデジタイゼーション、デジタライゼーションがあります。
デジタイゼーション | アナログな方法をデジタル化する |
デジタライゼーション | 組織や部門の一連の業務、ビジネスモデルなどをデジタル化する |
デジタルトランスフォーメーション | デジタル技術を活用し、企業全体を変革して新たな価値を創出する |
(参考:総務省 )
ほかに「IT化」という言葉もあります。IT化はデジタイゼーション、デジタライゼーションの2つに対応すると考えられます。
デジタイゼーションやデジタライゼーションは、業務効率化や生産性の向上、顧客満足度の向上を目的とする取り組みです。DXを推進するにあたり、まずデジタイゼーション、デジタライゼーションを成功させることがステップとなります。
DXがデジタイゼーションやデジタライゼーションと違う点は、DXの目的が「企業の変革」や「価値の創出」であり、そのための手段として「デジタル」を活用するということです。
日本企業のDX推進状況、成果は?
欧米などに比べて日本の企業ではDXが進んでいないといわれています。以下は日米を比較したDX取組の成果の調査結果(DX白書2023、IPA)です。
日本では「成果が出ている」と回答した企業が増加しているものの、米国との差は大きいことがわかります。
それでは、なぜ日本のDXは遅れているのでしょうか。
その大きな要因とされているのが人材不足です。
以下の図では、2022年度には21年度よりも人材不足が深刻になっていることがわかります。
また、「DXの進め方」も重要です。
DXをスピーディーに進めるためには、小さな単位で開発と検証を繰り返しながら進める「アジャイル」のアプローチが有効です。以下は、部門ごとのガバナンスにアジャイルを取り入れているかの日米比較です。
日本は米国と比較すると、アジャイルの原則が認識されつつも、浸透していないことがわかります。
このような事実も、日本のDXが進まないことの一因と考えられます。
DX推進のメリットとデメリット
DX推進のメリット・デメリットをまとめます。
《DX推進のメリット》
生産性の向上
DXで業務を効率化できれば、1人あたり、部門あたりの生産性が向上します。スキルの高い人材がルーティンワークから解放されて、本来の戦略的な業務に専念することができます。
情報共有システムの確立とデータの高度活用ができる
顧客データ、見込み客データなどの重要なデータがすべて適切に管理され、データが活用できる状態になれば、データドリブン経営でさらに強みが増します。
人材不足の解消
業務効率化により人材の不足が解消します。社員の働き方改革が進み、働きやすい職場になれば社員の定着率が上がる好循環が生まれます。
競争力の向上
生産性向上、データの活用、人材の適切な配置などにより、企業の競争力が向上し、市場優位性を高めることができます。
企業が成長する
販路の拡大、新商品の開発などを進めて、ビジネスチャンスを活かせるようになり、企業が成長軌道に乗ります。
《DX推進のデメリット》
初期投資が必要となる
デジタルツールの導入、コンサルティング会社への相談などにコストがかかります。
DXのための人材が不足する
DXに着手して進めていく段階では、人材の不足が障害となることがあります。中途採用、あるいは社内人材の再教育により人材を確保していく必要があります。
成果が出るまでに時間がかかる
今ある組織やシステムを変革して新しい体制を構築するには時間がかかります。
ChatGPTの登場でDXが加速化
OpenAIが2022年11月にリリースしたChatGPTは、オリジナルのテキストコンテンツを生み出す生成AIです。ChatGPTは、それ以前のAIと比較して格段に生成コンテンツの質が高く、自然な文章やプログラミングコードを生成できるため、2023年には世界中で活用が広がりました。
たとえば東京都デジタルサービス局は、サービスの質向上のためのDXを推進。
特設サイトで、「文章生成AI利活用ガイドライン」を公開しています。
同局は、このガイドラインに沿ってChatGPTを運用することで業務効率化をはかる方針を示しています。
このように、ChatGPTを使いこなすことができれば、リソース不足になりがちなDX推進にも大いに役立ちます。
DXの進め方
DXに必要な職種と組織
出典:情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の 機能と役割のあり方に関する調査」2019年5月
また、どんな組織で取り組んでいるかの調査では、DX専門の組織を設置し、そこに情報システム部門も関与しながら進めているという体制の企業が最も成果を上げているという結果が示されています。
これらのデータから、DXで成果を上げるには、企業は外部から人材を確保できなければ時間がかかっても社内の人材育成に力を入れ、専門チームを設置して、本格的に取り組む必要があることがわかります。
社内人材の育成にあたっては、デジタルスキルを学びなおす「リスキリング」が重要です。
DXで活用すべきデジタルテクノロジーとは
DXで活用すべきデジタル技術の代表例として、たとえば以下があります。
AI
AIは日本語で人工知能のことで、生成AIと識別系AIがあります。AIの学習方法には企画学習とディープラーニング(深層学習)があり、ディープラーニング技術の進歩により、ChatGPTのような生成AIが飛躍的な進化を遂げています。
識別系AI | 主に機械学習を重ねることにより、新たなデータの識別や将来予測をする |
生成AI | 文章、画像、音声、動画などのオリジナルコンテンツを生成できるようになったのが「生成AI」であり、その代表例がChatGPT |
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングでは常に最新のシステムを提供できるため、レガシーシステムが発生しません。オンプレミスのシステムをクラウドへ移行する企業も増えてきています。
IoT
IoT(Internet of Things)は日本語では「モノのインターネット」と訳されます。センサーや通信の技術も使われています。製造業や1次産業のDXに欠かせない技術です。
ビッグデータ
膨大な情報を処理するビッグデータは各種の分析に用いられます。IoTやAIなどと組み合わせて活用されることもあります。
RPA
RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションです。人が行う「パソコンへの入力作業」をAIやロボットが代行・自動化するようなしくみをいいます。
AR/VR、メタバース
メタバースはインターネット情報につくられた、多くの人で共有できる仮想空間のことです。メタバースの参加者はVRゴーグルにより没入できます。ARとは現実の世界に情報を重ねて見せる「拡張現実」です。
参考:メタバースとは何?どんなビジネスが展開?マーケティング分野でのメタバース活用も解説!
DXの手順
実際に企業や事業部門がDXを推進するときには優先順位が異なることも当然ありますが、DXの手順の一例を以下に示します。
(1)現状と課題を整理する
全社または事業部門などの現状把握と課題抽出をします。
(2)DXの目標を設定する
課題をふまえ、社員の「こうしたい、こうなりたい」というビジョンを取り入れて目標を決めます。「売上倍増」「すごい新商品を世に出す」のような、大胆な目標設定がおすすめです。難しい目標を達成するためにはどう変革すればいいのか?という視点に立つことができます。
(3)社内的な合意形成をする
定めた目標を経営トップから全体へ共有します。
(4)人材を配置する
必要に応じてDX推進チームを設置し、人材を配置します。ここからは担当チームがDXの主な担い手となります。社内全体でDXの目標を共有しつつ、各部署が自律的に動ける組織をつくることがポイントです。
(5)デジタル戦略を定める
目標を達成するためにどんなデジタル戦略、デジタル施策を実施するかの計画を立てます。前述したようなアジャイルの原則を取り入れることが重要です。
実行案では、最新テクノロジー活用のほか、レガシーシステム対策、既存データの整備・管理・活用、部門間のデータ連携といった、既存システムの改革施策も欠かせません。
(6)計画の実施とPDCA
計画を実施し、PDCAを回します。
DX推進を成功させるポイント
DX推進を円滑に進めて、成功させるためのポイントとして、以下があります。
全社的な意思統一が重要
どんな目標をもってDXを実施するか、できるだけわかりやすい言葉で全社員に伝え、共有することが重要です。
スモールスタートを繰り返す
全社的な合意形成のあとは、社内の各組織がそれぞれ、DXに取り組みます。ここで重要なのが前述した「アジャイル」の考え方です。小単位のチームが少しずつ開発やシステム改変をして、成果を検証してトライアンドエラーを繰り返すアジャイルのアプローチで前進していきます。ひとつ成功体験を得ることで次の道筋が見えてくることもあるでしょう。
ボトムアップのアイデアを活かす
経営陣が強力なリーダーシップでDXを進めていく例もありますが、できるだけ若手人材のアイデアを活かすことも大事です。アジャイル方式であればそれぞれの現場でアイデアを出し合いながら進めていくことができます。
DXへの取り組み事例とマーケティングDX
最後に、DXを進めた企業事例と事業DXとしての「マーケティングDX」でシャノンが提供できることについてご紹介します。
DX推進で成果を上げた企業事例
以下は、DXに優れた企業の事例として取り上げられることが多い3例です。
Netflix
動画サービスのNetflixはDXを繰り返してグローバルになった企業として知られています。1997年の創業から20年余のあいだに少なくとも4度のDXを実行しました。1度目のDXは、無店舗のビデオレンタル業。2回目はサブスクリプションサービスへの転換、そして3回目のDXが動画ストリーミング配信への転換です。4回目にはオリジナルコンテンツの配信をスタートさせました。同社はさらに次のDXとして「ゲーム事業への進出」も実施しています。
Airbnb
Airbnbは2008年設立。世界中の民泊を提供している個人や企業と、宿泊先を探すユーザーをマッチングさせるサービスです。使っている技術はホテル予約システムとほぼ同じですが、新たな市場である民泊にフォーカスした点が新しい取り組みでした。同じシステムを難民に滞在先を提供する支援プログラムにも使用しています。
Uber
日本ではUber Eatsの方が有名になってしまいましたが、最初はタクシー配車アプリ「Uber」からスタートしています。日本では法制上、一般の車がタクシーサービスを提供することができないのですが、アメリカではUber Eatsと同様、空き時間にお金を稼ぎたい個人がタクシーサービスを提供しています。
シャノンのマーケティングDXとは
シャノンではマーケティングDX支援を行っています。
シャノンでは、マーケティングDXを
「購買行動の変化に対応するために、顧客情報をデジタルで一元管理し、自社のマーケティング・プロセスを変革する。その上で最適な顧客体験を構築し、競争上の優位性を確立すること」
と定義しています。
マーケティングDXは、全社のDX、CXの一部分と位置付けることができます。
オフラインでの接点が減少した今、デジタルで自発的に情報収集をする購買担当者が増えています。この状況に対応するため、マーケティングDXが求められています。
まず顧客情報をデジタルで一元管理し、その後最適な顧客体験を提供します。
マーケティングDXにはMAツールが有効です。
- オフライン/オンラインのすべての接点のデータを一元管理
- データクレンジング、行動履歴の記録、スコアリング、企業ごとのデータ管理などを自動化
- 興味/関心の程度に合わせたWebページの表示やコミュニケーションで顧客体験向上
などの機能があり、マーケティングDXを効率よく進めることができます。
参考:
シャノンが考えるマーケティングDXとは?
マーケティングDXとは?【前編】定義やメリット、進め方、企業事例を紹介
マーケティングDXとは?【後編】「顧客体験の構築」はウェビナーを軸に展開
まとめ
本稿のポイントは以下の4点です。
- DXとはデジタルトランスフォーメーションのことです。
簡単にいうと、データとデジタル技術の活用により企業を変革し、競争力の優位性を高めていくことです。 - 日本のDXはアメリカより遅れていて、人材不足やアジャイル・アプローチの不足が課題です。
- DXを進める手順では、ハードルの高い目標を達成するためにどう変革するか?という視点に立ちます。
デジタル技術の活用とともに、既存のデータ、既存システムの改革施策も欠かせません。 - シャノンではマーケティングDXの支援を行っています。顧客データを一元管理して、効率よくマーケティング施策を実施できます。
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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