
株式会社シャノンCMO兼グロース担当の浅野です。
展示会の話をします。
先日、東京で開催されたマーケティング系の展示会が来場者の少なさで話題になっていました。展示会担当の方なら、「来場者が少ない」という報告がどれほど胃に刺さるか、身に覚えがあるはずです。
IT系か、それ以外か——展示会ROIの現在地
結論から言うと、IT・DX系の展示会と非IT系では、ROIの悩みの種類がまったく違います。
「展示会 is Dead?」というテーマでウェビナーで話したところ反響がありました。それほど、IT・DX関連の展示会は飽和状態です。
大ゴマを抑えている企業はTV CMなどで認知獲得に多大なコストを払い、相対的に展示会出展費用が小さく見えている。あるいは「オンラインリードは取りきった。展示会は刈り取りの場」として位置づけている。そのどちらかでないと、IT系展示会でROIを出すのが難しい状況になっています。主因は「来場者減」の一言です。
一方、製造業に代表される非IT系の展示会は来場者は多いものの、意思決定者の割合が以前より落ちているという声も聞きます。ただし日系企業の場合、合議制やミドルアップダウンがあるため、役職者=意思決定者とは限らない為一概に悪くなっているとは言えません。
「展示会施策」といっても、IT系と非IT系では浮き沈みの質が全然違います。もうそろそろ「どの業界・規模の展示会か」をつけないと議論がかみ合わなくなっています。
なぜ「予算再設計」が問われているのか
展示会担当者が「予算再設計」に敏感なのは、削っても攻めても詰められるからです。
展示会関係者が抱える恐怖は2つです。
- コストを削りすぎて、本当にいいのか
- 前年・前回踏襲でいいのか
展示会はまとまった金額が動き、営業・技術など他部門も巻き込みます。「全然人が来なかった」「良い商談がなかった」となればマーケへの風当たりが強くなる。かといって装飾を豪華にしたところで来場者が少ければ「なんでこの展示会に出てるの?」と言われる。
さらに、コストを削って例年通りのリード数を獲得できたとしても、その後の商談化・受注まで追うと「例年と変わらない」「むしろ悪い」という結果になることもある。会期だけでなく、その後の責任もついて回るのが展示会施策です。
費用対効果を上げる鍵は「会期中」にある
会期後フォローより前に、「会期中に記憶に残ったか」を見直すことが費用対効果改善の最短ルートです。
会期後のフォロー施策(お礼メール→反応取得→営業共有)については弊社が提供しているMAツールが有効ですが今回は割愛します。残念な事に、どの企業も後工程が手厚くなる事で展示会後の「お礼メール合戦」をただ実践するだけでは成果は得られません。その前段として「会期中」の成果最大化を見直してほしいのです。
確度不明・今すぐでないリードに対して、最初の御礼メールの反応を上げるにはどうするか。差出人名・送信時刻・件名といった細かいテクニックも大切ですが、何より重要なのは——
「あぁ、あのブースね」を思い出してもらえるか
です。
ブースに立ち寄って説明を聞いた人も、コンパニオンからノベルティをもらっただけの人も、御礼メールが届いたとき「どのブースだっけ?」となってしまうと、そこで終わりです。開封はされても、記憶が戻らなければクリックにつながらない。
この「想起の質」こそが、会期中の投資と会期後の成果をつなぐ橋です。
ブース集客の予算配分——正解はないが、原則はある
ブースへの集客に正解はありませんが、「想起に貢献するコストか」を軸に優先順位をつけることができます。
記憶に残るブース設計にはコストがかかります。装飾・出し物・ノベルティ。どこに予算を投下するか、経済合理性よりも企業文化や経営・営業役員の「嗜好性」「過去実績」に引っ張られることが多い。それが現実です。
過去、シャノンでも様々な集客を試みました。ドン・キホーテ風のブース、お笑い芸人を呼んでの漫才、西日本では実演販売士にプレゼンをお願いしたこともあります。
会社ごとのストロングポイントをどこに置くか——ここに正解はありません。ただ、一つ言えることがあります。要所は変えず、ところどころでチャレンジを入れる。全てを真新しい施策にする勇気は、普通の組織では持てません。それでいい。
大切なのは、自社が選んだ施策の「見せ方」を御礼メールに必ず反映させることです。ブース造作なら、ブース画像を。ブースプレゼンなら、人だかりのある一枚絵を。ノベルティなら、ノベルティ画像を。「あのブースね」の想起材料を意図的に仕込むことが重要です。
ブースプレゼンター3択——それぞれの強みと落とし穴
ブースプレゼンターには「アナウンサー系」「実演販売士」「プロ・プレゼンター」の3つの選択肢があり、自社の展示会の性格に合わせて選ぶ必要があります。
想起の質を上げる手段として、ブースプレゼンは検討に値します。ただし大前提が一つ——「プレゼン自体が良い」場合に限ります。
「〇〇さんが頑張ればいいんじゃないか」で社員を立たせる企業を、展示会でたくさん見てきました。大体、うまくいっていません。ブースプレゼンはそれ自体が技術です。音響・お立ち台・前を通る人への声がけ。本番前の5〜10分は話者が緊張して戦力にならない。人だかりができたと思ったら終了とともに散っていく。向かい側のブースプレゼンとかぶって音量戦争になる——こういうことが普通に起きます。
① アナウンサー系
良くも悪くもブレない。人が来なくても一定のクオリティで読み上げる。集客力はないが安定感はある。ブース構造がしっかりしていて、そもそも人が来やすい展示会なら有効です。
② 実演販売士
客寄せと場の盛り上げのプロ。人がいない状態から人だかりを作る力があります。デパートの催事で見かけるあのスキルです。元芸人の方も多く、結果として費用対効果が良いケースがあります。
ただし3点注意が必要です。
- 動画撮影・二次利用に追加コストがかかることがある
- 専門性の高い内容は苦手。業種特化・技術特化の展示会では情報過多になってパフォーマンスが落ちる
- 「プレゼンターの印象」が強すぎて、製品・サービスの記憶が霞む可能性がある
3点目は特に要注意です。御礼メールで思い出してもらいたいのは「製品」であり「プレゼンターの面白いお兄さん」ではありません。
③ プロ・プレゼンター/ビジネスMC
最近注目を集めている第三の選択肢です。実演販売士の弱点——専門性・二次利用・製品の霞み——を相当程度クリアしています。「良い意味で目立たない」ため、記憶が人ではなくブースに残りやすい。
具体的には、株式会社MOVED(プレゼン研修・代行)や、AiKAGI(ビジネスMCサービス)のようなプロがこのカテゴリに当てはまります。
最大の課題は予算承認のハードルです。アナウンサー系や実演販売士は「確かに自社にはいない人材」として予算化しやすい。一方、プロ・プレゼンターは「社内の誰かが頑張ればいいのでは?」という反論を受けやすい。実際に現場で見れば「ここまでの質感は無理だ」とわかるのですが、紙の説明だけで予算を通すのが難しい。
まとめ:削るより「想起設計」を先に考える
今回は展示会の費用対効果を上げるために、会期中の施策と会期後の御礼メールを「想起の質」でつなぐ視点でまとめました。
IT系展示会は来場者減でROIが合わない→コストを落とす、という話が先行しています。ただ、コストを落とすだけでは根本的な解決にはなりません。削るなら「想起に貢献しないコスト」を削り、「あのブースね」を思い出させる施策に集中投資する——この優先順位の整理こそが、予算再設計の本質だと思っています。
製造業など非IT系でも、チャレンジだけではGOがかかりにくい文化があります。自社の文化に合った追加施策を一つ成功させることが、次の予算承認につながります。



