BANTはIBMが1960年代に提唱した、法人営業で用いられるフレームワークです。
古いと言われることもありますが、コロナ禍をきっかけに営業手法が変化したことで再び注目を浴びています。
今回は、BANTの意味や、注目が集まる理由、営業活動の効率化における重要性を紹介します。
シャノンのフィールドセールスとインサイドセールスでのBANTの活用方法についても紹介しますので、参考にしてください。
BANTとは?オンラインの営業で活かすメリットも解説
まずはBANTの意味と、注目が集まっている理由、活用するメリットについて紹介します。
BANTとは?
「BANT」とは、法人向けサービス・商品(BtoB)を扱う会社が、顧客の情報をヒアリングする際に用いるフレームワークです。BANTという名称は、以下の項目の頭文字から取られています。
- B(Budget): 予算
- A(Authority): 決済者
- N(Needs): 必要性
- T(Timeframe): 導入時期
さらに、以下の2つの項目をプラスした「BANT-CH(バントチャンネル)」というフレームワークが用いられることもあります。
- C(Competitor):比較・検討中の競合相手
- H(Human resources):人員体制
BANTやBANT-CHは、案件獲得の見込みを判断するために押さえておきたい基本項目として、法人向けの営業やマーケティングで重視されています。
BANTに注目が集まる理由
コロナ禍をきっかけに、多くの企業でオンライン中心の営業活動が行われるようになったことが理由です。
国土交通省の「令和4年度 テレワーク人口実態調査」によると、営業職の44.6%がテレワークを取り入れていることからも、オンラインの営業手法が根づいていることが伺えます。
一方で、オンラインよりも対面での商談の方が成約に繋がりやすいと言われています 。対面では場の雰囲気を把握しやすいため、表情や話の内容に変化をつけやすく、相手からの信頼を獲得しやすいことなどが理由です。
そのため、ヒアリングや提案といった商談の初期のフェーズではオンラインを活用し、クロージングなど重要な局面では対面を選ぶことで、高い成果を期待できます。
非対面と対面のアプローチを効果的に使い分けるためには、マーケティング部門と営業部門、インサイドセールスとフィールドセールスなど、複数部署の連携が重要になってきます。
部署をまたいで共通する指標があると、成約に繋がる可能性が高い顧客(ホットリード)をスムーズに受け渡すことが可能です。
シャノンでも、ホットリードをインサイセールスドからフィールドセールスにパスする時にBANTをSFA上に登録しています。
こうした理由から、BANTやBANT-CHに注目が集まるようになりました。
BANTを活用するメリット
BANTを活用するメリットとして、以下が挙げられます。
最適なタイミングでクロージングができる
顧客のBANT条件が揃ったタイミングは、購買意欲が非常に高まっている状態だと言えます。
そのタイミングで他のリードよりも優先して対応し、顧客の背中を押すことができるため、自社の機会損失防止に繋がります。
顧客目線のアプローチができる
長い期間をかけて検討されるBtoBの商品やサービスは、顧客が購買を決めるために「自社に合うか」「費用対効果が期待できるか」などの総合的な判断が必要です。
BANT条件をもとに、顧客が購買を決定するためにどんな情報を必要としているのか理解を深められるため、顧客に寄り添った提案が可能になるでしょう。
デメリットを挙げるとするなら、BANTを聞き出すこと自体が営業の目的になりやすいことです。そうならないように、BANTの用途に関する認識を社内で統一することが重要です。
シャノンでもBANTを活用していますが、あくまで顧客へのアプローチを考えるための参考材料の1つとして扱っています。
BANTの重要性と商談時にヒアリングする方法
BANTの重要性と、商談でのヒアリングやアプローチの方法について条件ごとに紹介します。
Budget(予算)
定価が決まっていないケースが多い法人営業では、自社や競合相手の商品・サービスに対する予算を知ることで、顧客に適した提案が可能になります。自社の商品・サービスが顧客の要望を実現できるか判断する目安として、予算は重要な役割を果たすでしょう。
予算をヒアリングするために参考になるのが、BANT-CHの「C」である競合相手です。顧客が現在導入している競合商品・サービスの価格や、これまで検討したことのある競合商品・サービスから、予算の目安を知ることができます。「現在こういう商品・サービスを使ってらっしゃいますか」「過去にご検討されたことはありますか」などの切り口から、予算を引き出していきましょう。
一方で、これまでに競合商品・サービスを検討したことがなく、顧客が予算を具体的にイメージしていないケースもあります。その場合は、顧客がどんなプロセスを経て予算化するのか理解することが重要です。
大企業であれば年間の予算が項目ごとに細かく決められていることが多いため、「検討できる範囲の価格は最大でどのくらいでしょうか」などの質問をしながら、参考になる数値を引き出しましょう。中小企業では予算に融通がきくことも多いため、次章で解説する決裁権を確認しつつ商品・サービスの魅力を訴求することで、予算の獲得を目指すことができます。
Authority(決裁権)
法人営業の顧客は、最終的な意思決定を行う決裁権は経営陣が持っていて、商談の窓口担当者は商品やサービスの比較・検討のみを任されているケースが多いです。社内での検討を進めるサポートをするためにも、稟議が承認されるまでに関与する人やフローを把握することは欠かせません。決裁者と現場の意思決定者を把握して、提案内容に活かしましょう。
決裁権は、「稟議の起案から承認までにかかる期間の目安はどれくらいでしょうか」といった切り口から確認できます。さらに、「過去に商品・サービスを導入した際の決裁で、何が判断のポイントだったのでしょうか」「決裁のご担当者様を説得するために、私どもで協力できることはございますか」などの問いかけから、商談を前に進めるためのヒントが得られるでしょう。
ちなみに、BANT-CHの「H」である人員体制は、商談の窓口担当や決裁者だけでなく、導入後の運用担当者なども含む項目です。人員体制もあわせて確認することで、購入して終わりではなく、購入後も長いお付き合いをつづけていくために何が必要なのか理解を深められるでしょう。
Needs(必要性)
顧客が抱えるお悩みは「ペインポイント」と「ゲインポイント」に分けることができ、ペインポイントはお金を払ってでも解決したい緊急性の高いニーズを意味します。顧客のペインポイントを知ることは、自社の商品・サービスを使った解決策を提案するために重要です。
必要性を確認するには、現状の課題であるペインポイントや、理想の成果にくわえて、それらの背景や理由をヒアリングしましょう。
顧客が自覚しているニーズについては「どのような点が問題なのでしょうか」といった質問で具体的にヒアリングできますが、潜在的なニーズを引き出すためには工夫が必要です。
「上司に自信をもって報告できる成果はどのようなものですか」「成果が見込めそうなほかの施策を選択しないのはなぜでしょうか」など、顧客が考えを具体化するサポートができるような質問を投げかけてみてください。
くわえて、窓口となっている個人のニーズと、企業全体のニーズが一致しているか確認することも重要です。また、実際に使う人と窓口が違う場合は、現場目線の本質的なニーズを掴む工夫が求められます。そのためにも、BANT-CHの「H」である人員体制をあわせてヒアリングする必要があるでしょう。
Timeframe(導入時期)
導入時期が決まっているかどうかも、成約の見込みを立てるために役立ちます。他の条件と比較しても確認しやすいうえ、導入希望時期までの期間によってどれくらい必要性を感じているか判断することも可能です。ホットリードを見極めるためにも、導入時期を確認することは重要でしょう。
導入に前向きな顧客には「いつまでに納品が必要ですか?」と直球な質問を投げかけてもいいですし、検討段階の顧客には「そのお悩みを解決しなければいけない時期は決まっていますか?」と必要性に絡めながらヒアリングするのも効果的です。
ただし、商品の必要性を感じてもらえても、他業務との兼ね合いですぐには導入できないケースもあります。そのため、正確な導入時期を把握するのは難しいですが、いますぐ導入できない理由を知ることで顧客へのアプローチに活かせるでしょう。
BANTでブレの少ない見込み顧客管理を行うコツ
実際にBANTを活用するには、各条件で成約を見込めるかどうかの基準を、部署や会社全体の共通認識として設定する必要があります。ここではBANTの条件設定の例や、設定した条件に満たない場合の対応方法、ヒアリング時の注意点について解説します。
BANT条件設定の例
シャノンでは、リードをインサイドセールスからフィールドセールスに引き渡す指標としてBANTを活用しています。
インサイドセールスとフィールドセールスで設定しているBANT条件の一例を紹介します。
インサイドセールス記入用BANT
- B 話を聞いてよければ確保
- A レコメンダー
- N ニーズが顕在化している
- T 半年以内に導入したい
フィールドセールス記入用BANT
- B 予算化活動中
- A 接触済み
- N 検討・PJ体制がある
- T 半年以内に導入したい
これらの項目をMAやCRMなどのツールに記入することで、適切に引き継ぐことができます。
BANTが不足している場合には
BANTのうちどの条件が不足しているのかによって、対応方法が変わってきます。
A(決裁権)とN(導入時期)に関しては、商談で顧客に寄り添ったアプローチを行うことで情報を補うことで、成約に向けて前進できるでしょう。
決裁権が不明の場合は、稟議・承認に必要な工数を把握しながら戦略を立てることも可能です。導入時期が不明の場合は、スケジュールづくりをサポートするための提案もできます。
一方で、B(予算)とNeeds(必要性)が不足していると、場合によっては直接的なアプローチの優先順位を下げる判断も必要です。
商品・サービスの費用と顧客の予算がかけ離れている場合は、成約に結びつく可能性は低いでしょう。そのため、インサイドセールスやマーケティング部門へと引き渡すことで、フィールドセールスはより確度の高い顧客への対応に専念できます。
必要性が乏しい場合は、間接的なアプローチで相手の価値観を変えるきっかけを作ってから、直接的なアプローチに移行すると効果的です。
こうした判断を早い段階で行うためにも、直接的なアプローチに移る前にBANTの各条件に関する仮説を立てることが大切です。
シャノンでも、まずはご担当者さまの部署や役職、企業や取り扱っている商材などの情報をもとに仮説を立てながらヒアリングを行った上で、サービスの概要や用途を訴求しています。
BANTを活用する際の注意点
BANTをヒアリングする際に注意してほしいのは、お客様との関係を壊さないよう柔軟に対応することです。
たとえば、予算を初回の商談でいきなり確認されると、相手に失礼な印象を与えてしまう可能性があります。信頼関係を築けず機会損失に繋がってしまうリスクもありますので、商談の雰囲気を壊さないよう慎重にヒアリングしましょう。
まとめ
本稿のポイントは以下の3点です。
- BANTはインサイドセールスとフィールドセールス、マーケティングなど、異なる顧客アプローチを行う部署同士の連携に役立つ
- 商談前にBANTの各項目についての仮説を立てて、適切なアプローチを行うことで、成約の確度を高めることが可能
- BANTが不足している場合にも無理にヒアリングしようとせず、顧客との関係性を重視しながら寄り添うことが大切
最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。
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