現代マーケティングにおける広告戦略とは。BtoBではどう進める?

6年連続で2ケタ成長してきた日本のインターネット広告費が、2019年「ついにテレビメディア 広告費を越え、初めて2兆円を超えた」というニュースがありました。

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出典:株式会社電通、「2019 年 日本の広告費」

インターネット広告は近年に急拡大しています。しかし図のように、テレビメディア広告費は減少傾向にあるものの、それほど大きく減っているわけではないようです。

今回は、デジタル広告が急成長し多様化する広告の最新事情をご紹介し、後半では、BtoBマーケティングの広告戦略について考えます。

リードが長らく商談化しない

テレビなどのマス広告を凌駕して、インターネット広告が拡大

インターネット広告の登場により、市場も戦略も大きく変化した広告の最新事情について解説します。

広告の定義、広告とマーケティングの違い

広告とは何でしょうか。
様々な表現で定義されていますが、アメリカマーケティング協会(AMA)の定義によれば、広告(Advertising、Advertisement)の定義は以下となっています。

広告とは、メッセージの中で明示された広告主が、特定のオーディエンス(広告メッセージの受け手)に対して、アイディア・商品・サービスなどを、様々なメディアによって告知する、有料の非人的コミュニケーション

この定義には5つのポイントがあります。

1. 広告主が明示されている
2.広告のターゲットが想定されている
3.広告料を払って商品やサービスの情報を届ける
4.不特定多数へ向けたメッセージである
5.メディアを介して告知する(非人的=人が直接伝えるのではない)

広告とマーケティングが混同されることがありますが、広告はマーケティング活動のひとつです。

マーケティングには以下のような幅広い業務が含まれます。

  • 市場調査
  • ターゲットの設定
  • 商品開発
  • プロモーション
  • 販売

上記のなかの商品やサービスの情報をターゲット層に届ける「プロモーション」の施策に、販売促進や広報などともに「広告」が含まれます。

■参考記事
マーケティングとは?その定義と歴史をふまえると、現代のマーケティングもわかる。おすすめ本も紹介!

広告の種類は3つに大別され、そのうちインターネット広告費の伸びが顕著

広告にはさまざまな媒体・手段があり、全体は大きく3つに分類されます 。

マスメディア広告は「マスコミ4媒体」と呼ばれるテレビ・ラジオ・新聞・雑誌への広告です。4つのなかでも特にテレビが大きなシェアを占めます。

プロモーションメディア広告は、4媒体以外のメディアへの広告とイベントによるプロモーションなどです。

マスメディア広告とプロモーションメディア広告はオフライン広告、インターネット広告はオンライン広告という区別もできます。

広告の種類
オフライン広告 マスメディア広告 テレビCM
ラジオCM
新聞広告
雑誌広告
プロモーションメディア広告 看板
DM
電車の中吊り
タクシー広告
フリーペーパー
各種のイベント
オンライン広告 インターネット広告 リスティング広告(検索広告)
ディスプレイ広告
動画広告
SNS広告

■参考記事

広告の3分類のシェアは以下の通りです。

2020年、広告費総額はコロナ禍の影響を受けて大きく減少しました。
しかしそんななか、インターネット広告だけは着実に増えてきたことがわかります。

マスメディア広告、プロモーションメディア広告は減少傾向にあるとはいえ、有力な手段であることに変わりはありません。
今後も3つの分野の広告が目的に応じて活用されていくと予測できます。

インターネット広告の急成長はGAFAと重なる

インターネット広告は2000年以降で急成長しました。以下は30年間での媒体別広告費の推移です。

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出典:ウェブ電通報、2018年のインターネット広告媒体費は1兆4480億円に。モバイル+動画広告の伸びに注目

2000年代の初めごろまで、マスメディア広告のなかでも特にテレビCMが大きな割合を占めていました。しかし2005年頃からインターネット広告が拡大します。

インターネット広告が伸びるのと同じ時期にGAFAも急成長しています。特にGoogleとFacebook はグローバルで強力な広告媒体となりました。

これからもマスメディア広告は必要? 成果を出せる広告戦略とは

多種多様な広告媒体があるなかで、どんな媒体を選べば効果的でしょうか。広告戦略の枠組みについて紹介します。

広告の5Mとは? 最終目的は「売上拡大」と「イメージ向上」

“マーケティングの父”と称されるフィリップ・コトラーは、広告戦略の枠組みとして以下の「5つのM」を示しています。

「Mission(目的)」「Message(メッセージ)」「Media(媒体)」「Money(予算)」「Measurement(評価)」の5つです。

(1)Mission:広告の目的
広告の目的には以下があります。

  • 「情報提供」・・・商品Aを知ってもらう
  • 「説得」・・・商品Aを購入するべき理由を伝える
  • 「リマインダー」・・・かつて商品Aを購入した人のリピートを促す
  • 「強化」・・・商品Aを購入した人の選択は正しかったと伝える

(2)Message:広告のメッセージ
ターゲットに明確に伝わるよう、企業は文言やビジュアルを工夫します。
現代は顧客行動が多様化・複雑化しているため、効果的なメッセージの作成はより難しくなっています。

(3)Media:媒体
費用対効果が高いと認められる媒体を選定します。
リーチ(到達範囲)・フリークエンシー(露出頻度)・インパクト(メッセージ訴求力の高さ)を選定の基準として媒体候補を絞り込み、そのなかで検討の結果費用対効果が高いと認めた媒体を「媒体ビークル」といいます。 さらに詳細な広告配信スケジュールを決定していきます。

(4)Money:広告の予算
広告の予算を決定づける要素は「製品のライフサイクル」「市場シェア」「競争環境」「広告の頻度」「代替性(“代替性がある”は、差別化ポイントが少ないという弱み)」「広告効果の測定」です。

(5)Measurement:広告効果の測定
広告が狙い通りの成果を出せるかの検証が重要です。
PDCAを回してより効果の高い広告プログラムを構築していくことができます。

  • 「コミュニケーション効果」・・・広告がターゲットに“伝わったか”を測定
  • 「売上効果」・・・広告の売上への貢献度を測定

広告を出すには多額の費用を要しますが、狙い通り効果があるとは限らない難しさがあります。
顧客の興味関心は常に新しいものにうつるので、変化に対応する必要もあります。規模に関わらず多くの企業が、常に新たな広告戦略を模索しています。

広告の最終的な目的は、「売上を拡大すること」のほか、「ブランドイメージ向上」も挙げられます。
売上を上げ、かつブランド力を高めるためには、マーケティング戦略全体のなかで広告を位置づけて施策を進めていく必要があります。

「クリエイティブ」が広告の成否を決める

クリエイティブとは、広告の制作物のことです。
具体的には「ディスクリプション(文言)」「ブランドロゴ」「商品パンフレット」「プロモーション映像」などがあります。

印象に残るキャッチコピーやイメージキャラクターなどが大ヒットして売上にも寄与する広告事例は少なくありません。
いったん注目を集めたコンテンツがSNSで一気に広まる現代において、広告クリエイティブの重要性は増しています。

見栄えを重視したイメージ優先の広告と、商品の優れた機能をはっきり説明する広告のどちらがより効果的でしょうか。
また、キャッチコピーの候補を絞り込んだ最後の2つで迷ってしまうときもあるでしょう。

このようなときはABテストを実施します。
ABテストとは、AとB2つのパターンを同時に実施して、効果を比較することです。
時間はかかりますが、ABテストを繰り返すことでより効果が高いクリエイティブとなっていきます。

マスメディア広告だけでなく、インターネット広告でもクリエイティブは重要です。
現在は効率よく多くの情報を届けられるインターネット動画広告が伸びていて 、動画広告で成果を出すことが多くの企業の課題となっています。

広告の選択肢が広がり、トータルな効果測定がますます重要に

前述したように、マスメディア広告、インターネット広告、プロモーションメディア広告の3つがあり、それぞれのカテゴリーのなかに多くの広告手法があります。

多彩なチャネルから情報発信する「メディアミックス」には認知を高める相乗効果があるので、企業はこれらを組み合わせて最大の効果を上げていきます。
今後も、インターネット広告だけでなくマスメディア広告・プロモーションメディア広告も活用され続けるでしょう。

さらに俯瞰してマーケティング全体を考えると、自社ホームページ制作やSEO、メルマガ、SNS企業アカウントの運営など、広告によらない(広告と比較して費用がかからない)施策も多数あります。

担当者は自社のマーケティング戦略に基づき、具体的なマーケティング施策や広告の出稿プランを決定していきます。

広告施策で難しいのは効果測定ですが、テレビCMなどのマスメディア広告も最新の技術で測定が可能になってきています。

複数の広告を正確に効果測定して全体を評価するために、マーケティング戦略のなかで各種の広告施策が明確に位置づけられている必要があります。

BtoB企業の広告戦略をどう進める? 最近の傾向とシャノンの場合

効果的なBtoB企業の広告の事例を紹介し、最後にシャノンの事例をご紹介します。

インターネット広告はBtoB向き

BtoB企業がかつてマスメディア広告を使ってこなかった理由は、広告が基本的に「不特定多数の個人が対象」だからです。

BtoB企業の顧客となる企業は数も属性も限定されている性質上、自社の情報を届ける手段は広告ではなく、営業担当者の電話などによるアプローチがメインでした。

インターネットが普及すると、BtoB企業がターゲットに対して情報を届ける手段が増えました。

  • 自社のホームページからの情報発信
  • 名刺交換した見込み客などへのメールマガジン
  • ホワイトペーパー
  • ネット広告

ネット広告は、情報を届ける相手を細かくセグメントできることがメリットです。

検索ワード入力に対応するリスティング広告や閲覧履歴に応じて表示されるディスプレイ広告を、顧客企業の担当者がPCで情報収集をしている画面に配信することができます。
メディアへの出稿より広告費が抑えられること、効果測定がしやすいこともネット広告の魅力です。

BtoB企業のTVCMが増えている!? タクシー広告もおすすめ

ネット広告により効率のよい集客に成功したBtoB企業も増えてきました。

しかし新たな傾向として、最近BtoB企業のTVCMを多く見かけるようになりました。
たとえば、コロナ禍で需要が見込める「リモートワーク支援」を提供する企業のCMも複数放映されています。

また、ビジネスマンとの接点が多いため「BtoBに効果あり」とされているのが、タクシーの運転席・助手席の後部に設置されている「タクシー広告」です。
ステッカー広告やパンフレットラックが以前からありましたが、タブレットを設置して動画を配信する「デジタル・サイネージ」が注目を集めています。

■参考記事
テレビCMより効果的な広告?タクシー搭載型デジタル・サイネージ『Tokyo Prime 』

BtoB企業がTVCMやタクシー広告に積極的になった背景として、以下のポイントが挙げられます。

「指名検索を獲得できる」というメリット
顧客が購買行動をはじめるとき、すでに認知した商品名や企業名があれば入力して検索しますが、これを「指名検索」といいます。
指名検索は企業にとって有力なリードの獲得につながります。指名検索を多く得るためにはブランド力を上げる必要があるという点はBtoC、BtoBを問いません。
オフライン広告を効果的に活用しているBtoB企業は、指名検索の獲得に成功しています。

オフライン広告も効果測定が可能になった
オフライン広告も効果を測定することが一般化しています。
TVCMの場合なら、放映期間とそれ以外の指名検索数を比較。
タクシー広告では動画が最後まで再生された割合を測定します。
明確に費用対効果があると認め、継続する企業が増えているようです。

人材採用にも有利に作用する
IT系のBtoB企業などでは、事業が拡大中であればあるほど人材不足が深刻です。
商品名や企業名が認知されれば求人に応募する人が増える効果があります。
また、TVCMには他より厳しい審査があるので、「信頼できる会社」というイメージも得られます。

シャノンでも動画広告を準備中

シャノンの場合、新しい広告の展開として、現在動画広告を準備中です。

YouTubeの本編動画の合間に出る6秒以内の動画をバンパー広告といいます。

バンパー広告は短いですがスキップすることができず、ブランド名を告知するのに効果があります。

実は2年ほど前、シャノンではバンパー広告を実施しました。

短い動画では「声」が大事だということで、「鬼滅の刃」の鱗滝左近次役でも有名な声優の大塚芳忠さんに依頼。動画は2パターンを作成しました。

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上記のように、「指名検索が大きく増加」という一定の効果は出たのですが、次回はよりビジネスにつなげられる全体設計を目指しています。

この事例からもおわかりのように、マーケティング戦略を明確にして、そのなかで広告をきちんと位置付けて進めていくことが重要です。

まとめ

本稿のポイントは以下の4点です。

  1. インターネット広告費は2019年にテレビCM広告費の額を超えるまでに急拡大しました。
  2. 企業はインターネット広告、マスメディア広告、プロモーションメディア広告を組み合わせて効果を上げています。
  3. 広告戦略の枠組みとして、コトラーが提唱した「Mission(目的)」「Message(メッセージ)」「Media(媒体)」「Money(予算)」「Measurement(評価)」の5つのMがあります。
  4. BtoB企業はインターネット広告を活用するようになり、最近ではブランドイメージ向上に効果的なTVCMやタクシー広告を実施することもあります。

最後に、シャノンのマーケティングオートメーションでは、データの一元管理による効率的なリード獲得とナーチャリングが可能です。


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